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六角の花   作者: フミ
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本心

「すまんアキヨリ」


アキマサは誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟き

何時の間にかその場を去っていた


「あー腹減った飯!飯!」


緊張から開放されたタキが愛馬アクライに跨り炊事場に向おうとすると


「おう兄ちゃんワシも腹減ったよ」


ゴクラクサイが見た目に似合わぬ身軽さでタキの後ろに飛び乗った


「うへぇ!ゴクラクサイ様すげぇ!」


「馬術なら負けんぞ 兄ちゃん

それっ!」


手綱も握っていないゴクラクサイに操られアクライは走りだした


「おい!タキ!俺をおいていくな!」


アキヨリが後を追おうとすると袖を引っぱられ仰け反りそのまま振り返るとリッカの顔があった


「アキヨリちゃんは先ず怪我の手当てです」


「あっああ お前リッカだよな」


「そうよ アキヨリちゃんよね」


「そんな顔してたっけ?」


「えっ!昨日と変わってないと思うけど 何か変?」


「頭は凄いけど変じゃないよ」


「うっうわわ これは違うの そのあの

ちよっとじろじろ見ないで」


「ああ 俺の部屋に行こう

包帯やら傷薬やら何でもあるから」


「うん アキヨリちゃんそんな目してたのね」


「ああ 崖の上と下じゃよく見えなかったよな

変か?」


「変じゃない アキヨリちゃんそんな鼻してたのね」


「ああ 昨日こいつに散々つつかれた

変か?」


「うぴょうびょびょ」


眠っていた雛がアキヨリに頭をつつかれ目を覚ました


「変じゃない あ痛っ!」


リッカが足の小指をぶつけ悶絶し憎らしげに足元を見ると金属製の大きなカエルがあった


「だっ大丈夫か?ここら辺散らかってるから気を付けろよ

ちよっと見せてみろよ

なんだお前裸足じゃないか」


「大丈夫 あのこれは その 違うの

それにしても一体何なのここは」


「俺の部屋だよ自分で建てたんだ凄いだろ」


リッカがやっとアキヨリの顔から目を離すと

円錐形の尖った屋根のいびつな形の小さな小屋が庭のはずれに建っていて

その周りには南蛮のいでたちの石像やら

さっきのカエルやら

作りかけの訳の分からない物が散乱していた


「あがんなよ ほらっ遠慮しないで」


「遠慮してないわ どうやって入ればいいの?」


「こうやるんだよ

とりゃ!」


アキヨリが小屋の壁に体当たりすると壁が横回転に くるりと回り

アキヨリの身体は小屋の中に消えた


「すごーい!わたしも!」


リッカも同じようにやったつもりだったが勢いがよすぎて中にいたアキヨリにぶつかってしまった


「うわっ!あぶね!」


アキヨリは咄嗟に雛を庇ったせいでひっくり返ると抱きかかえた雛以外に懐に入っていた物が全て飛び出した

それは雛の餌とする為道中捕まえたカエルやらネズミやらバッタやらセミだった


「びぴよぴよょょ」


アキヨリの手からすり抜けた雛が駆けずり回って あっという間にそれらを全部たいらげてしまった


「あははあははあーはっはっは!

こいつはでっかくなるぞあははあはは!」


「うふふうふふ あーおかしい

でもアキヨリちゃんネズミや動物が傷口に触ったら膿んでしまう

まず洗わないと」


「うん それでは頼む」


アキヨリは水の入った桶と手ぬぐいを差し出した


「あら用意がいいのね」


「ここには何でもあるよ

これが傷薬 油紙に包帯 はい」


「はっ!はい うわ ひどい傷…」


アキヨリが勢いよく羽織の前をはだけたので一瞬ギョッとなり赤面したリッカだったが

傷口を見て余りの様子に胸の中を下から押し上げられたような感じがして涙がこみ上げてきた


「痛かったでしょう?こんなになるまで…怖かったでしょう?

あんな高い崖を」


「全く痛くもないし怖くもない!

痛て!痛てて!リッカそこ痛てぇ」


「痛いんじゃないもう…

あのねアキヨリちゃん…

戦にいくの?」


「ああ行くよ…」


「嫌なんでしょ顔にかいてあるもの」


「嫌とか嫌じゃないとかじゃないんだ

俺しかやれない事があるんだ」


「事情とか使命とかを聞いてるんじゃないの!

あなたの心を聞きたいの!」


「俺の心…」


「そう!あなたの心

聞かせて!お願い!」


なぜそんな事を聞くのかと聞き返したくなったが

そんな事は問題ではないリッカが心の底から知りたがっている

それだけで自分の真意を話す理由は充分アキヨリはリッカの目を真っ直ぐ見つめ答えた


「嫌だ!物凄く嫌だ!そして恐い!死ぬのも殺すのも物凄く恐い!」


「アキヨリちゃん!アキヨリちゃん!ホウライ山へ行こう

私と一緒に私の住む所に行こう

ね!」



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