タメトモ
「あれ?私いつ帰って来たのかしら?」
リッカが目覚めて最初に目にしたのは見慣れた天井であった
「どうゆう事?アキヨリちゃんが夢?ひよこちゃんが夢?
あっ!違うよく見たら違う…
なんでこんなに私の家に似てるんだろう?
そうだお父様が提案して建てたんだったわ このお屋敷も
あらお父様がいない…
いけない私 よそのお屋敷で朝寝坊したのかしら」
「しとらんよ しかしお前の独り言は普段の話し声の大きさと変わらんのぅ」
ゴクラクサイは障子を自分の顔の幅だけ開け庭を眺めていた
背中にリッカの独り言を聞き また背中で独り言に答えた
「お父様聞きたいことがあるの」
リッカは赤面してはいなかった
昨日から持ち越した好奇心が羞恥心を飲み込んでしまったようだ
「なんだぁい?アキヨリの事かい?」
「それもなんだけど昨日ナリマサ様が演奏してた楽器なんだけど
何て名前なの?」
「バイォリンとか言ったかな?
南蛮の楽器だぁよ
いい音だよなぁ」
「うん でもとっても悲しい曲だった
誰が作って何て曲なの?」
「曲の名前かぁ?そんなものは無いよ
タメトモの為にナリマサが即興で演奏したんだろうに」
「凄い!あんな素晴らしい曲が即興なの⁈」
「ああナリマサは音楽や書画の才があるなぁ
でもそれ以上にタメトモを悼む気持ちが曲に表れたんだろうなぁ」
「ところでお父様タメトモ様ってどなた?」
「へやぁぁぁぁぁ!
お前何にも聞いて無かったのかぇ?
ならば聞かせてよいものやら…」
ゴクラクサイはやっとリッカの方に顔を向けた
「アキヨリちゃ…アキヨリ様が気に病んでいると聞きました
お父様が教えてくれなければアキヨリ様に聞きます」
「そりゃまじぃよ
分かったから心して聞くのだど
タメトモはアキヨリの父アキナガの二人目の弟でな
滅法強い男だったなぁタメトモの旗を見ただけで城を開け渡したもんもいたなぁ」
「戦でお亡くなりになったの?」
「いいや百人束になってもタメトモには敵わんだろうな
実際そうだったぁ
この前の戦でなシジマの味方だったもんが裏切ったんだ
アキナガが一時宿泊してた寺が夜襲されそうになってな
いち早く察したタメトモがそ奴らを待ち伏せして百人程いた敵をみんなぶっ倒したそうだぁ」
「凄い!でもそんな方がなぜ亡くなったのです?」
「うー話しづらい
あのなタメトモはその百人を皆殺しにしたそうだ
逃げて行くやつも捕まえてな
裏切りとか人の道に外れた事が大嫌いなやつだったからなぁ」
「怖い…やっぱりお侍は怖い!」
「最後まで聞きなぁ
その後なぁ段々タメトモはおかしくなっていったそうだぁ
急に叫び声をあげたり寒くもないのにガタガタ震えだしたり
ついには人の見分けもつかんようになって兄弟やカミさんに襲いかかるようになったそうだ」
「祟りよ人殺しなら当然だわ」
「違うよぅ
タメトモはなぁ戦でもな人を手にかける時
心の中で 「すまん すまん」と言ってたような男だよ
だから耐えられなくなってしまったんだぁ
そんなタメトモを仕方なく座敷牢に入れたそうだ」
「そんな…タメトモ様は処刑されてしまったのですか⁉」
「いいや
そこでアキヨリだ
アキヨリはタメトモに食事を毎日運んでな
ずっとずっとタメトモに話しかけてたんだとよぅ
そしたらタメトモは人の心を取り戻したそうだぁ」
「やっぱりアキヨリちゃんはそういう人なんだ…」
「でもな
人の心を取り戻したタメトモは自ら命を絶ったそうだぁ」
「嘘!そんな事って!アキヨリちゃんは自分が叔父さんを殺してしまったと思ってるんじゃ…ああ!ああ!」
「おそらくなぁシジマ家のもんは武勇の優れたもんこそ心根の優しいやつが多い
難儀だよなぁ…」
リッカはうつむき顔を手で覆ったきりもう口を開かなくなった
ゴクラクサイがやはり話さなければ良かったかと後悔した時
外の様子が急に騒がしくなった
バカラッバカラッバカラッ!
「あーはっはっはっはっは!
はーらへったはーらへった
腹減った時はどうするの?」
「屁を我慢すりゃ腹の足し
あー腹の足し
あーはっはっはっはっ!」




