表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
55/788

ゴクラクサイ

「へやぁぁぁ⁈

あんなに行くのを嫌がっていたのに一体何があったのかえ?」


「怪我をしたの!走って行ってしまったの!大変なの!」


「さっぱり分からんが見たところお前は怪我などしとらん

利発なお前がとっちらかっておるのは余程の事なのだろう

落ち着いて答えなさい

誰が怪我をしたのだ?」


「言いたくない!」


「へ⁈

誰も知り合いの居ないこの土地で誰が怪我をしたからといって言いたく無い事などないだろうに」


「とにかく早くシジマのお屋敷に連れて行って下さい!

サクヤは?サクヤはどこにいるの?」


「ああ さっきの茶屋に預けて来た」


「何を間の抜けた事を言ってるんです

私を探しに来たなら何故サクヤに乗って来ないのです⁉」


「へやぁぁぁ

お前が厠に行くと言ったきり戻らんから厠に探しに行ったんだぁ

で厠におらんかったから そのまま探していたら ここにいた」


「ああもう じれったい

私がサクヤを連れてきます!

お父様はここにいてください」


「へやぁぁぁぁ」


リッカ言い終わるより先に二丁程だろうか 故郷より辿った道を引き返す為走り出していた


リッカの父ゴクラクサイが惚けた顔で三発目の屁をたれた頃蹄の音が聞こえてきた


「お父様早く乗って!

サクヤ私とお父様二人乗るけど

多分もう少しだから我慢して」


ゴクラクサイがよろけた足取りながらも身軽にリッカの後ろに跨ると

サクヤと呼ばれた白い牝馬は長い鬣をなびかせ軽やかに

リッカが何の指図もしないのに駆け出したのだった


「お父様 道はこっちで良いのでしょう?」


「ぶっ」


「お尻で返事なさらないで下さい!」


「そうだよ ほれ もう見えるだろうに」


「あっ!本当だ 大きなお屋敷」


山道を抜けると広大な平野が広がり

シジマ家の屋敷と思われる大きな屋敷を城下町が取り囲み

またその周りに農村だろうか無数の集落

そして一番外側には広大な田畑

豊かな国であろ事は一目で分かった


「五十万石の大大名だからなぁ

あの屋敷は父ちゃんが建てたんだどぅ」


「えっ⁉

どうしてお父様が?陶芸家に家など建てられるの?」


「設計はできんよ

部屋割りだの全体像だのの大まかな案を出したのだよ」


「へんてこな案を出して大工さんを困らせたのでしょうに」


「そんな事ないよぅ

みんな喜んで面白がってくれたよぅ」


「ねぇお父様」


「なんだぁい?」


「私お父様の昔話って聞いた事ない

大名の屋敷に携わったりして

もしかして陶芸家になる前何か他の仕事をしてたの?」


「わかんね忘れた」


二人が不毛なやりとりをしている内にサクヤの駿足は集落を抜け城下町に入り

壁や柱が鈍く黒く光る立派な門の前に辿り着いた


門の前には屈強な身体つきの それでも品の良い顔つきの若者が出迎えてくれた


「ゴクラクサイ様お久しゅう御座います

峠の茶屋でお待ち頂いていれば迎えの者を向かわせたのですが

物見の知らせを聞いて慌てました

生憎父と大お爺様は戦地に赴いており不在に御座います」


「へやぁぁぁぁ

立派になったなぁアキマサ

元服は済ませたのだな月代が似合っておるぞ

最近はそういう細く剃るのが流行っておるのか?

ナリマサはおるだろう?

あやつは…」


「お話しの途中ですが失礼します!

ゴクラクサイの娘リッカと申します

アキヨリ様が私と鷹の雛を助ける為怪我をしました

今すぐ誰か向かわせて下さい!

いいえ道を教えて下さい私が行きます!」


「シジマ アキマサと申す

アキヨリは今何処に?怪我の具合は?」


「茶屋の近くにある崖から綱を使って下りて駆けて行かれました

綱にしがみついた時 腰から肩にかけて酷く擦り剥きました

綱が真っ赤になるほど出血してます」


「自分の勝手でやったこと

本日そなた達が来ると知っていて

この有様

申し訳ありません

ゴクラクサイ様リッカ殿 御容赦下さい」


「いんだよぅ

リッカなんで黙ってたんだあ?

父ちゃん恥かいちまった」


「だって…

そんなの事より道を教えて下さい!早く!」


「長旅でお疲れでしょう

奥でひとまずお休み下さい」


「だったら誰か…」


「自分でやったことは自分で始末をつける

助けが必要なら頭を下げて頼む

常々言い聞かせております」


「そんなぁアキヨリはリッカを助けてくれたんだろぅに

ワシが行くょう」


三人が押し問答を繰り広げると門の奥から甲高い声が割って入った


「アキマサ様!厠に行ってまいります!」


黒い巨大な馬に跨った

年の頃はリッカやアキヨリと同じであろう

少年が三人の横を駆け抜けて行った


「タキ!お客様に失礼であろう!」


「出もの腫れ物ところ嫌わず

一刻を争うゆえ失礼つかまつる

明日には戻ります!」


「長い厠だな!

あははあははあはは」


「ひゃはっはっはっ」


「良かった本当に良かった

ありがとうタキさん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ