アキヨリちゃん
「えっ⁈なんて事なの
あなたがシジマ アキヨリ!」
「ああ そういう事だ
あははあはは よろしく俺が君の許婚ってことだ」
「嘘!嘘よシジマ家の御曹子があなたみたいな…」
「野蛮人か?」
「違う!鳥の雛や見ず知らずだった私を…」
「褒めてくれてるのか?
それとも侍に余程悪い印象でもあるのか?
いずれにせよ もう心配無いようだな」
アキヨリは自分の背丈の二倍程登った崖から飛び降りた
「落ち着いたら こんな崖よじ登るのは到底無理だな
遠回りになるが道は分かっている
俺の屋敷に行くのだろう?
だったら伝えてくれないかアキヨリは明日戻ると」
「そんなにかかるの?
怪我してるじゃない そんなに血が出てるじゃない!
そこで待っていて人を父を呼んで来ます」
「それには及ばない
自分で勝手にやった事だ
人の手を借りる訳にはいかない
明日また逢おう!」
アキヨリは雛が揺れないように左手を懐にあて驚くような速さで駆け出した
「アキヨリー!アキヨリー!」
「イビョ!イビョ!イビョ!」
リッカがアキヨリの後ろ姿にその名を叫ぶと
彼が返事をする代わりに懐の雛が目を覚まし
まだ羽の生え揃ってい
ない翼をバタつかせ鳴き始めた
「あははあははあはは くすぐったい!
元気だな心配したぞ」
「ひよこちゃん目を覚ましたの?
良かった本当に良かった!」
「リッカー!ありがとう!」
「どうして⁈礼を言うのは私の方よ!」
「君がいなかったら躊躇して こいつを助けられなかったかもしれない」
「そんな…そんな…
ああっあああああっ!」
全く皮肉に聞こえないアキヨリの真っ直ぐな物言いに
リッカは堪えていたものが堰を切り溢れ出し
両手で顔を覆い泣き出してしまった
「どうした⁈どこか痛むのか?」
「痛くて泣いてるじゃない!
唐変木!
もう知らない!」
「変なやつだな
心配だが明日だ
俺も君の名前を叫びたくなった!
リッカー!リッカー!」
「アキヨリー!アキヨリちゃーん!」
「あははあははあははあはは!」
アキヨリは ちゃん付けで呼ばれ
なんとも こそばゆかったが
気にしていたらいつまでたっても屋敷に辿り着けなさそうなので
只々笑いながら駆けて行き
その姿はリッカからもう見えなくなった
「リッカーどこじゃーどこにおるー」
リッカの背後から年老いた男の声が聞こえてきた
「お父様!リッカはここです!
早く!早くシジマ家にお連れ下さい!」




