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六角の花   作者: フミ
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信念

雛のひっかかった木は少年が飛びたった位置からは 高さにして十尺程低く

少年が崖の方を向いて左側 距離も十尺は離れていた

更に雛のいる所の真上には大きな岩があり綱を下ろすことは出来ない

綱を振り子のように振って勢いをつければ

あるいは届くような距離ではあったが

崖の角度が直角よりなだらかな部分や突き出た岩があり綱がひっかかって思うように振れなかった


少年は出直して今使っている綱より長い物を探してくるかと考えたが

かろうじて木の枝にひっかかっている雛が風で揺れる度に心臓を後ろから掴まれるような不安感に襲われ


「今ここを離れる訳にはいかない 」


決意をかためてしまったのだ

さらに突然現れた厄介な少女も放っては置けなくなった


自ら死を選ぶ者の心を変えるには死を覚悟した者の決死の行動だけである

言葉や理論や損得などでは人の心は変えられない

少年は強くそう信じていた


一度失った命は二度は戻らない

少年が赤の他人にそこまで親身になるのは

物心ついた時から多くの身近な者が二度還らなくなる

それを数多く経験しなければならない環境で育った為で死に対して異常な嫌悪感と恐怖心を抱いていた


「まだ生きている内は生きるんだよ‼」


一度意を決した少年は躊躇なく自らの命を繋ぐ綱を手放した

しかし少年の飛び出した勢いは明らかに目標に届くものではなかった

だが突き出た岩を蹴り跳躍し かろうじて木の根元に右手をかけぶら下がった


「見たか!命とはこういうものだ!」


意味はよくわからなかったが説得力があり

少女は全身に籠めた力を抜いたがすぐに再び全身を硬直させた

少年が木にぶら下がった重みで枝が揺れひっかかっていた雛が落下したのだった


「やんぬるかな!」


少年は直角に近い斜面を駆け下りた


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