縁側
「うふふ
お腹空いたでしょう お食事お持ちします」
「いや もう動けるのだ 居候が
上げ膳据え膳では申し訳ない
炊事場まで行く」
「私もここでいただきたいのです
」
「そ、それなら俺も持ってくる」
「もう ここでお待ち下さい
お礼がしたいのです
あんなに必死になって私の…
守って下さって…」
リッカは涙声になって言葉をつまらせた
「分かった待つ」
アキヨリが聞き分けるとリッカは
微笑んで部屋を後にした
「もう夏なんだな…」
リッカが去ったあとアキヨリは庭の景色に誘われるように縁側にある縁台に腰掛けた
「ああ、なぜ今まで気付かなかったのだろう
この屋敷の庭は俺の育った屋敷に似ている」
「あらアキヨリ様
そちらにいらしたのですか?」
「ああ、一つ聞きたいのだがこの屋敷の庭を設えたのは どこのどんな人物だろう?」
「お父様です…」
リッカはまた声を詰まらせた
「すまん父君を思い出させてしまった」
「違います あなたがいないから
また行ってしまわれたのかと…」
「すまなかった
リッカどうだろう無作法だがここで食べないか?」
「はい…はい」
二人は縁台に腰掛け膝の上に御膳を乗せ少し遅い朝食を共にした
「懐かしい 昔はこうして…」
「こうして?」
アキヨリは庭を見つめたまま暫く黙り込んだ
「アキヨリ様?」
「あっああ、昔は夏になると兄上や兄者と縁側で夕涼みしたんだ
あっはっはっは」
「なんです?お一人で笑って
私にも教えて下さい」
「すまない すまない
兄者が…兄者では分からんな
俺が兄者と言うのは二つ上の兄イエナガだ」
「では兄上とお呼びになるのは
アキマサ様ですね」
「ああそうだ
それでな兄者がどこからかスイカを盗んで来てな自分の太刀で切ろうとしたんだ
それを兄上に見つかってな」
「あら それは叱られたでしょう?
刀は侍の魂ですもの」
「ああ叱られた 冷えていないスイカなど食うやつは馬鹿者だとな」
「あははあはは あぁ可笑しい
それでそのスイカは?」
「兄上の言う通り屋敷の裏にあった川に吊るして冷やした
だが言った本人の兄上が待ちきれずに冷える前に手を付けて兄弟喧嘩になった
あっははあははあはは」
「うふふ仲の良いことですわ」
「ああ、忘れない忘れるものか」
「アキヨリ様…」
「大丈夫だ大丈夫
なあリッカ兄達や友の事これからも聞いてはくれないか?」
「はいお聞かせ下さい」
それから二人は食事を済ませた後も暫く縁台で言葉を交わすでもなく蝉の声と高く昇り初めた夏の日差しを身に纏っていた
「なあリッカ」
アキヨリが何か思い出したように口を開いた
「はっはい?」
「俺達が初めて会ったのも今頃の季節だったな」
「そうです懐かしいです
でも私は昨日の事のように覚えています
あなたは忘れていましたけど」
「それは何度も謝った
なあ…あの時…
あの時なぜお前は自ら命を絶とうとしていたのだ」




