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六角の花   作者: フミ
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白い旗黒い旗

「アキヨリ殿いかがいたした!」


アキヨリのただならぬ様子を見かねて皆集まって来ていた

そしてその目にしたのだった

そこにあるべきでは無い物を


皆何故自分達がこの戦の勝敗が今にも決しそうな重要な時に

一軍を率いる攻めの要であるアキヨリが都に赴かなければならないのか

道すがらアキヨリから告げられていた


あの大軍勢が敵かもしれない

いや敵である公算が高い

先程までの陽気な雰囲気は既に無く

皆突き刺すような緊張した気を全身から放っていた


「もう見つかっているかも知れないが 身を隠す」


豪族の墓の上には祠があり皆が身を隠すには十分な大きさであった


皆を祠の中に促すとアキヨリは少しの間考えこんだ


「兄上ならどうするだろうか」


重要な決断を迫られると決まって脳裏をよぎるのは長兄アキマサの早過ぎるまばたきだった


「これから あの軍勢を探りに参る

タキとシバそれとお目付けのお二方はここに残るように」


居残りを告げられたアキヨリの直臣二人はいかにも不服そうであった


「我らでは足でまといと申されるか!」


喉まで出かかった所でさえぎるようにアキヨリがつづけた


「明朝まで我らが帰らなかったらタキは兄上の元に走れ

四万の軍勢が十五日程度で到着する

その情報を兄上にもたらすだけでも我らが役目は十分果たせたような物だ

残る三人は迂回して都に赴き

オアイ様に万一の事があった場合

我らの所縁のある者を探し出し

各地のお味方に知らせる手配をしてくれ

必ず帰還すること

きっとだぞ!」


皆が各々の役目が容易でない事に

自らの身を引き締めているようだった


日が沈む前に敵であろう軍勢の全貌を掴まねばならない

休む間もなくアキヨリ達は注意深く正体不明の軍勢へと近付いて行った


軍勢は開けた平地に野営を準備していたので身を隠す林などは隣接しておらず

近づくのは容易ではなかった


しかし程無くして兵糧などの物資を運ぶ部隊が本隊より遅れてやってくるのが見えた


「好機なり!」


アキヨリ達は物資運搬部隊に紛れ込もうと

大きく迂回して部隊の裏手に回り込み

少し薄暗くなって来たのも手伝って難なく紛れ込む事が出来た


しかし何よりも 自然に紛れ込む事が出来た原因は

形振り構わず走り続けた小汚い彼らの身なりだった


まず気になるのは何者がこの軍勢を指揮しているのかという事であり

それは掲げている軍旗で見て取れるだろう

遠目ではよく見えなかったが黒地の旗であったのは確認出来ていた


武士の軍旗は白地が流行っていて

黒地を用いるのは今日帝の掲げる錦の御旗くらいである


「まさか帝が武家から政権を取り戻す為兵を挙げたのか

くっくっく」


アキヨリが異常に馴染んでしまった輸送部隊の中で一人笑いをしているのを

皆 腹を立てて良いやら

驚いて良いやら

一緒に笑ってよいやら

どう対処して良いか分からずにいると

もう輸送部隊は野営地のほぼ中心に到着し荷をほどき始めた


すると野営地をつむじ風が通り過ぎ

近くまで来ても確認できなかった軍旗がはためいた


アキヨリがまさかと言った そのまさかだった


帝の軍勢であることを示す

黒地に金色の日輪 錦の御旗そのものだった


「アキヨリ殿!」


家臣に脇腹をつつかれ あごをしゃくるようにして示された方向を見ると

帝だけが使用することが許される

日輪の屋根飾りのついた御輿がそこにはあった


アキヨリ達があまりの驚愕に身動き出来ずにいると

代わりに御輿が激しく震えるように動きだし

中からは人の声とは到底思えない激しく甲高い音が発せられた


「ピイィィィィィィー!」



つづく



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