羽化
「初陣を思い出すなあ
大御祖父様と協力し燃える水を使ってサワヤマ城の城門を燃やしたのだった…」
「アキヨリ様!ぽやっとしない!
左端の温度が足りません!」
「ああ、すまない昔を思い出していた」
「どんな事です?」
「戦の話さ 聞きたくはないだろう?」
「はい…いえ!お聞かせください」
「始めて戦に参加した時の事だよ
敵の城が山城で守りが堅く燃える水と火薬で城門を燃やそうとしたんだ」
「アキヨリ様が大活躍したのですね」
「大御祖父様が準備して下さって俺が最後を務めた
しかし…」
「しかし?」
「まだ上手く炎を操る事が出来なかった俺は用意された物を一気に燃やしてしまった
城門どころか城の殆どを吹き飛ばしてしまった」
「やっぱり大活躍じゃないですか」
「戦には勝ったのだが多くの人を殺してしまった
そうだ!あの時だ!何故忘れていたのだろう」
「何を忘れていたのですか?」
「数珠だよ 俺はあの時殺してしまった戦う術を持たない女、子供、老人の遺体を数え リッカのくれた白い玉の御守りに その数だけ青い玉を加えたんだ」
「ごめんなさい私調子のいいことを言ってしまって…」
「いいんだ 大切な事を思い出せた
出来上がった数珠を身につけて…
リッカお前の事を忘れようって誓ってしまった」
「そんな!アキヨリ様…」
「すまない」
「違います!あなたのせいなんかじゃない!
何故一人で抱えてしまうのです!
私は悔しい!」
「ありがとう でも思い出せた
そして今リッカの役に立てている
やり直せる気がするんだ!
こんな死神みたいな俺でも!」
「そうです!そうです…」
交代で身動きの出来ないアキヨリを支えたり水を飲ませたり
いつもより仕事は増えていたが順調に作業は進み 窯の中の残り火も翌日の正午には全て消えていた
「アキヨリ様!大丈夫ですか!
もう終わりました!戻って来て下さい!」
「ああ、そうだろうと思ったよ」
アキヨリはイタズラっぽく笑ってみせた
「あっ!アキヨリ様!待って!
まだ人の入れる温度ではありません!」
アキヨリは壁の穴から無造作に窯の中に入って行ってしまった
「平気だよ 俺が操っているのは炎じゃない 熱なんだよ
それにリッカが命がけで守ったものが早く見たいんだ」
「だから!それは!私の心構えがまだ!」
だがリッカが後を追えるはずはない 窯の中はまだ湯が沸くほどの温度である
ほの暗い窯の中でアキヨリはあり得ない物を目にした




