炎の侍
リッカは割れてしまう事を異常に恐れている
焼き上がったからといってすぐ作品を取り出したら急激な温度変化で陶器という物は割れてしまうと聞いた
窯の壁に空いた穴により内部の温度が下がり始めている
アキヨリには手に取るように分かる
しかし分からないのは作品が割れたからといってリッカが何故これ程までに取り乱すのか
前回リッカは割れた作品を興味深そうに舐める様に眺め
叩いたり その作品の置いてあった場所を調べ
灰がどうの並べ方がどうのと只の研究の対象としてしか見ていない様に思えた
しかし今の取り乱しようはどうだ
分からない… そして
殺してしまう
という言葉…
事情は分からない
だがやるべき事なら分かる
熱を窯の外に出さなければよいのだ
「リッカ安心しろ!
俺にかかれば窯に壁などいらん!
よく見ておれ!」
アキヨリはリッカを立ち上がらせ肩を優しく一回叩き頷いて見せた
リッカの心の大波は瞬く間に凪となった
「とうぅりゃ!!」
壁の穴に向き合ったアキヨリは髪が逆立たんばかりの気合いを発して目をつぶりピクリとも動かなくなった
すると穴から噴き出す炎が窯の内部へと戻って行き
辺りの温度は急激に下がって行った
しかしアキヨリの髪が衣服が焦げ始めた
リッカは直感で理解した
アキヨリはこの鉄をも溶かす炎を操っている
そして命を削っている
「私は間違っていた
侍は簡単に命を捨てているんじゃない
自分の命を使って常人では出来ない事を成し遂げているんだ」
「リッカ!指図しろ!」
圧倒され呆然とつぶやいていたリッカはアキヨリの言葉で工房の棟梁へと立ち返った
「もっと奥です!もっと奥に炎を集中してください!
そう、そうです下から巻き上げるように
凄い!上下の温度差が全くない!
」
リッカは壁の穴に張り付き指示をだした
これ程までに中の様子を確認しながら仕事が出来るのは始めてだった
目の前で炎が渦を巻いているのに全く熱くないのだ
「何やら大きな物を作ったのだな
一、二、…数まではさすがに分からないか」
「目をつぶっているのにわかるのですか⁈」
「ああ…わか…る…」
アキヨリは突然ぐらつき倒れそうになった
「ああ!」
リッカが支えようと手を差し出すとアクヤが一歩早くアキヨリの襟首を咥え支えリッカを睨むように見据えた
「アクヤちゃん!分かった仕事に集中します!
それに止めたりしません!
私も命をかけます!」
「ならばよし!」
アキヨリの声は今度は窯の中から聞こえてきた
「アキヨリ様⁈」
「集中し過ぎてしまったようだ
心配はいらん
丸一日このまま続けるのだろう?
この方が都合がいい
ほら休ます指図しろ!」
「はい!ならばよし!
ひゃ!」
リッカは腕に冷たい感触を覚え振り向くとリヨウが水を火傷した所に掛けてくれていた
「リヨウちゃんありがとう
みんなありがとう!
私絶対諦めない!」




