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六角の花   作者: フミ
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オニヤンマと亡者

「叔父上!

なぜ⁈叔父上が⁈

目がどうかしたのか⁈

これは夢か?それとも思い出したと思っていた事が夢だったのか」


叔父ナリマサは自分を助けて命を落としたはずだ

力尽きようとする叔父を抱き起こした時 泥にまみれた手が滑って甲冑を中々掴めなかった感触まで覚えている


「どう言うことなのです⁈

誰か!誰か!なんとか言ってくだされ!」


ところが誰も口を開こうとしない

ただ笑っていた

幼き日の自分にくれた優しい笑顔があるだけだった

いくつもいくつも対岸に


「一体どういう事だ俺は気がふれてしまったのか」


チョン、チョン、チョン、チョンカッ、コロコロ


石が水を切って飛んできてアキヨリの足元に転がった

飛んで来た方を見ると右腕を振り下ろし左足だけで立った男がいた

石を投げたのはこの男なのは明らかだ

アキヨリは飛んで来た石を拾おうとしたが中々拾えない

手が激しく震えているのだ

その原因は石を投げた人物にあった


「タキィ!タキィィィィ!」


何が起こっているのかなど どうでもいい

ただ対岸に辿り着きたいその一心で駆け出そうとすると 目の前を掌ほどの無数の何かが飛び交い 対岸に焦点を合わせていたアキヨリの目には色がごちゃ混ぜになったものが映るだけだ


「なんだ!なんだというのだ邪魔をするな!」


手で振り払うとそのうちの一つを掴んでいた

掌を見ると大きなオニヤンマが一匹羽をバタつかせ逃れようとしている

アキヨリは無数のオニヤンマに囲まれていた


「アキヨリ」

「ヨリや」

「アキヨリ」

「アキヨリ様」

「アキ殿」

「兄様」

「若様」


羽音なのか 喋っているのかオニヤンマ達からアキヨリを呼ぶ声が聞こえて来た


「物の怪か⁈何の用だ!

かまっている間などないのだ去れ!去れ!」


「さらばだ」

「おさらば」

「お先にまいります」

「儂を忘れてくれるな」

「さようならで御座います」


オニヤンマ達は今度は別れの言葉を発し始めた

みな聞き覚えのある声だった


「うわあああぁぁ

兄上!

兄者!

叔父上!

うわあああぁぁ!タキ!」


アキヨリは再び駆け出そうとしたが不自由な足はもつれ前のめりに倒れてしまい

這いつくばって対岸を目指し濁流へと身を投げた


「待ってくだされ!

俺も!

俺が行くまで待ってくだされ!」


対岸まで辿り着けるはずはない

それでもよかったそれを望んでいたのかもしれない


だが突然辺りが暗くなり風が吹き荒れ アキヨリの両肩に食い込むような痛みが走った

間を置かずアキヨリは仰け反り引きずられるに元の川岸に引き戻され始めた


「離せ!離さんか!」


アキヨリはもがいたが肩を掴む力はさらに強まり風もさらに強く吹き荒れた


「ピイィィィィィィィィ!」


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