夕日に横たわる巨鯨は敵か味方か
都までの街道は広く よく整備されており
馬を用いれば二週間ほどで到着できる
しかしアキヨリは半分の七日間を予定していた
大軍勢が都からナリモト領まで行軍するとなれば約三十日間
彼の予想する敵の援軍の到着日時から考えると
もしそれが都からだとすればもうこちらに向かっていると考えてもおかしくない
とにかく急がねばならない
都での異変それは
彼の地に常駐する主君オアイ ミナヅネの命に直結するのだ
アキヨリが供に選んだのは足が早く読み書きできる者 十名
それにアキマサからのお目付役が二人
兄の所有する愛馬をすべて借り上げてきた
風のように走り疲れを知らなかった
しかし一日中走り続ける事などはできるはずもなく
馬がつぶれそうになると 馬から降りて手綱を引いて自らの足で走った
上半身をあらわにした侍たちが馬を引いて 大声で笑いながら走ってくるのだ
領民達は一体何事かと目を見張った
一週間も気を張り詰めていたら気がもたない アキヨリは冗談や可笑しな身振りで皆を和ませた
アキヨリは役目に対しては糞真面目だか人に対しては非常にくだけた所があった
しかし用心は忘れず遠くを見渡す事が出来る高所に差し掛かると
足を止めて注意深く森林や建物に目を凝らした
人が大勢隠れていれば鳥や動物たちの動きがそれを教えてくれるものだ
非常に目立つ彼らだったが それも狙いで
刺客が襲ってきたら返り討ちにして捕まえ
新たな情報を得ようという算段であった
アキヨリは勝ち戦よりこういった危うい役目が好きだった
そんな自分を自分自身危ぶみ
やはり自分は世継ぎとして産まれて来ずに良かったと思っていた
何事も無く四日目の夕暮れ時を迎え
近くに宿なり寺社なり無かっただろうかと
辺りを見渡す事の出来る高所は無いかと散策すると
いにしえの豪族の墓だろうか
小高い山を見つけアキヨリは一息に登りきり
周りを見渡し 目を見張った
二十里ほど先に祐に四万を超えるであろう
大軍勢が野営の準備をしていたのだった
つづく




