対岸
「やんぬるかな!」
このままでは流木はアクヤの脇腹に直撃し臓腑をえぐること必定
考えている暇はない
アキヨリは自由になる左足で鐙を蹴り出しアクヤを前に押し出す反動で流木に飛びつきその進路を変えた
アクヤも蹴り出された力と己の跳躍力を合わせ
激流に抗っている状態にも関わらず体がすべて水面から飛び出すような跳躍を現し間一髪流木をかわした
しかしアキヨリは流木にしがみついたまま激流にのまれ下流へと流されアクヤとの距離は急激に離れていった
「アクヤ!お前は川を渡り下流にて俺を待て!
必ずなんとかする俺にかまうな!」
しかしアクヤはアキヨリを追い下流へと進み始めた
「愚か者!共倒れとなるぞ!」
案の定アクヤは川底の岩に足を取られ体勢を立て直す内に元の川岸に押し戻されアキヨリを見失った
「ヒャァアンルルルル!」
アキヨリの名を呼んだのか嗎 下流へと川岸を走り出した
氷のように冷たい水 時折頭まで波に飲み込まれ ままならない呼吸
次第にアキヨリ体力を奪わ流木にしがみついた手は痺れ視界まで霞むに至った
「くそ!くそっ!このまま戦地に辿り着けもせず終わるのか!
すまん!皆すまん
愚かな主を持った事許してくれ」
あるいは身体が万全なら激流から脱出できたかもしれない
片足の自由でない今は流れに身を任せるだけとなるしかない
「ボオオォォォォ!ドドドド!」
最早これまで そう観念した時突然法螺貝と陣太鼓が鳴り
アキヨリはどこから聞こえるのかと霞む目を見渡すと対岸に鎧甲冑姿の一団が姿を現した
「敵か⁈味方か⁈よく見えん!」
対岸に気を取られていると水面から大きく顔をだした岩に流木がぶつかりアキヨリは元の川岸に投げ出された
「ひとまず命は拾ったようだ
ん⁈
あれはシジマの旗印!
おおい!
俺だアキヨリだ申し訳ないがこの有様だ」
水から上がったおかげでアキヨリの強靭な肉体は徐々に体温を取り戻していた
視界も正常になってくると軍勢の面々も見分けられるようになってきた
「あっ!兄上なぜこのような所に⁉」
一団の先頭にいたのはアキマサだった
その後ろにはイエナガその後ろにはシジマ家の重鎮達
「まさか敗れて落ち延びてきたのか
兄上いかがなされたのです!」
兄に向かって叫ぶと兄の後ろに重なり顔の見えなかった人物が前に進み出た
叔父ナリマサだった




