命の価値
炸裂する大地
砲撃音
青白い刺客の顔
右足の鋭い痛み
ナリマサの呻き声
吹雪
吹雪
吹雪
十二の松明の灯り
疲れきった十二の家臣
疲れきった十二の軍馬
それらが入れ替わり立ち替わり
めまぐるしく視界を耳を支配した
「うわあああ!うわあああ!」
自分の叫び声が耳を支配すると
現実の光景が目に飛び込んできた
大小 十二の盛り土
十二の白い花
美しい女
人間の脳は何でも関連づける癖があるという
十二 松明 家臣 軍馬 盛り土…墓
白い花…墓標…手向け
「ああああああぁぁ!」
人がただ口を開いて声を出せば(あ)という音となる
アキヨリは一つの盛り土に倒れ込む様に乗りかかり土を素手で掘り返し
ただ口を開いて声をだした
「やめて!アキヨリ様やめて!」
リッカが右腕にしがみついてきたが彼の動作に何の影響も及ぼすことは出来ない
やがて土に覆われていたものが姿を現した
それは黒い鉄板をいくつも紐で繋ぎ合わせた物だった
アキヨリはそれが何なのかすぐ理解した
今まで嫌という程目にしてきた鎧の胴当てで紐の色は緑
「アキヨリ様!
いにしえの武神カンウは緑を好んで身につけていたそうですな」
「タキお前に緑は似合わん 俺と並ぶ事が多いのだ俺と同じ赤にしてくれよ」
関連づけたがる脳は古い記憶を手掛かりに またいくつかのものを関連づけた
鎧 緑 戦友…墓
「タキィィィィ!タキィィィ!」
「アキヨリ様!お願いです!もうおやめ下さい
正直に申し上げます
私とゲンで埋葬させていただいたのです」
「なぜ嘘をついた!タキは迎えを呼びに行ったのではなかったのか!
俺の鎧は太刀は槍はどこにやった」
「あなた様が…」
リッカの言葉を遮るようにアキヨリの慟哭はつづく
「なぜ俺だけ助けたあぁぁ!」
「あなた様とアクヤちゃんだけに息があったのです
それ以外にどんな理由があると言うのです!」
「なぜずっと黙っていた!
俺は行かねばならない所があるんだ!」
「そんなお体で何が出来ると言うのです
お味方の元にも辿り着けません
辿り着いたとしても死んでしまうに決まってます!」
「俺は戦場で死なねばならんのだ
それが俺の価値なんだ!」
「仰る意味が分かりません!
どうして侍は簡単に殺して簡単に死にたがるのです
私がどんなにあなた様を助けたかったか知らないくせに
知らないくせに!
侍などという者は馬鹿です大馬鹿です!」
「お前に侍の何が分かる!
この数珠を見ろ!
玉の数は百八個どころじゃない
これは俺が手に掛けた女 子供 老人戦う術を持たない者の数だ!
俺がこの者達に報いてやれるのは戦って戦って戦って太平の礎になって死ぬことだけなんだ!」




