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六角の花   作者: フミ
35/788

十二

風が冷たい

辺りはまだ夜が明けたと言うには早い青みがかった世界


お気に入りの寝巻きのまま出て来てしまったが寒さなど気にならない

何か得体の知れないものが追い立てて来る

その得体の知れないものから

逃れたい逃れたい一心で二人を追った

彼の理性は二人の行く先 目的を知ったところで

逃れるどころか取り込まれるということを理解しきっている


二人を見つけた後どうするのか何を言ったらいいのか分かるはずなど無い

だが追わずにいられない


昨晩少しだけ雪が降ったので二人の姿は見失なっていたが

雪の上に残る足跡を辿り行き先を知るのは容易な事だった


アキヨリが理に叶わぬ行動をするのは産まれて始めてではないだろうか


半時ほどの道のりは木枯らしが吹き始めた時から春が恋しくなる

冬が嫌いなアキヨリの一冬分の長さの如くであった


「火薬の臭い?いや硫黄だ地下の熱が噴き出しているのか」


辺りに漂う臭いを吸い込むと頭痛が襲ってきた


「俺はここに来たことがある!」


右手をこめかみに添えた時激しく吹き上がるものが目に入った

そこだけ草木が無くゴツゴツとした岩が転がり生ある者を拒んでいるように見えた


「間欠泉があるのか」


辺りは暖かく道には雪が積っておらず二人を見失なっていたが

引き寄せられるようにアクヤを進めようとするとしきりに首を横に振って進もうとしない

怯えているような素振りだ


「どうしたアクヤ俺とお前に怖いものなどあるか」


しかし無理強いは出来ないアクヤを巻き込む自体理不尽だと思っていたからだ


「ここで待っていてくれ すぐ戻るからな」


アクヤから飛び降り左足だけで着地し 軽く尻餅をついたがすぐ起き上がり間欠泉に歩を進めると襟首にアクヤが噛み付いてきた


「行くなと言うのか いつからそんな臆病者になった 離せ!」


腕でアクヤを振り払い可能な限り早足で右足を引きずり再び歩み出すとアクヤはすごすごついてきた


アキヨリは少しだけ腹を立て後ろを振り返る事はしなかった


不自由な足で岩の転がる道を難儀しながら左足で跳ねるように進み間欠泉の前まで辿り着いた


「やはり見覚えがある!ここに俺は来たんだ!

なあアクヤお前は知ってるんだろう⁈

お前が怯えるなどおかしいと思っていた 何があった!教えてくれ!」


やっと記憶の手掛かりに巡り合った

言葉で返事が無くてもアクヤの反応がまた手掛かりになるかもしれない

それ以上に叫ばなければ破裂しそうなほどかれの内側が膨れ上がっていた

もう頭の中には二人の事は全く存在していなかった


カラコロロロ


石の転がる音 アキヨリがそれに全神経を集中させると人の気配


「誰かいるのか!」


怪我人とは思えない速度で気配の正体に辿り着いた


気配の正体を目の当たりにしてアキヨリはここまで来た目的を思い出した

リッカとゲンが立ち尽くしていたのだ


「アキヨリ様どうして」


リッカは今にも泣き出しそうな表情で非難するような視線をアキヨリに向けた


アキヨリはそんな事など意に介す事など無かった


おかしな光景を目にしたからだ


二人の後ろに土が盛られているのだ

大きい物が十二、小さい物が十二


リッカが置いたのであろう陶器で出来た白い花がそれぞれに供えてあった

さらに奥には洞窟が見えた


「十二…十二、十二!

うわあああああ !うわあああ!」


記憶を失った者が他愛も無いきっかけで記憶を取り戻す事があるらしいが

彼の場合は十二という数字であった


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