表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
33/788

数珠

タキはいつになったら迎えに来てくれるのだろうか

やる事が無いと気持ちが前向きになる事はまず無い

思い出せない事が拍車をかけ時々震える程の不安に苛まれた


窯から火が消え新たな作品達を目に出来る 楽しみにしていたアキヨリだが


「申し訳ありません すぐにはお見せ出来ないのです

冷やす時間が焼く時間と同じだけ必要なのです

もうしばらくご辛抱下さい

重ねて申し訳ありませんが私少し休ませていただきます」


無理も無い三日の間殆ど眠らず窯と睨み合っていたのだ

アキヨリには暇と孤独が同時にやって来た


代わりに弟子達が相手をしてくれたのだが

五人のリッカの父の弟子達は皆言葉を話せなかった

戦で家族を亡くした恐怖で言葉をなくしてしまった者達をリッカの父が引き受け自らの技を生きる糧を与えて来たそうだ


ゲン、チョウキチ、タノスケの男性が三人

マイ、オタマの女性が二人


歳の頃は皆二十歳前後で皆若かった

普通火を使う製鉄を行う(たたらば)などでは穢れるなどと言って女性が働く事は稀であるが

ここではリッカを含め半数が女性である


こうした事実や皆の和気あいあいとした雰囲気にリッカの父の人柄が伺えた


弟子達が侍を怖がるのは当然で

最初はアキヨリに近寄って来なかったが今ではすっかり打ち解け

暇があると彼の話を聞きにやって来た

人里離れた所で暮らす弟子達にはアキヨリの話はとても刺激的だったのだろう


もちろん戦の話は避けた

皆底抜けに明るく腹を抱えたり膝を叩いたり喜んで聞いてくれたが

いかんせん一方通行で張り合いが無い

何か伝えたそうにするのだが行動する前に諦めてしまっているようで

それがアキヨリには悲しく申し訳なかった


「自分はいくつの家族をぶち壊して来たのだろう」


アキヨリはそんな時決まって首に掛けた数珠を握り締め祈るような素振りを見せるのだった


だが仏門に帰依している訳ではなく

窯入れの前日 体力をつける為鶏を調理していたリッカに


「ほんの少しでいいのだが

食べさせてくれないかなぁ」


「うふふ アキヨリ様よろしいのですか

お首に掛けた数珠に叱られますよ」


「ああ これか これは違うんだ

それに畑に出来るものや草木にだって命はあると俺は思う

堅い殻に被われた種に俺は親の愛情を感じる

仏の教えは日の本に伝わる間様々な人間の都合で変わってしまっている俺は信じない」


「ではなぜ数珠を?」


「ああ旨そうな匂いだぁ少しでいいのだ ほんの少しで」


「うふふ ほんの少しですよ働く人の食事なのですから

アキヨリ様には粥がございますから」


話したく無いのだな そうリッカは悟ってそれ以上聞かずにいた


兄弟、家臣達も知る者はいなかった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ