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六角の花   作者: フミ
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シビン

リッカはなぜ嘘をついたのだろう

アキヨリは甲冑を身に付けていたはずだ

タキは口をきける状態では無かっただろう


しかしアキヨリはタキの喋り方を知っていたリッカの言を疑いもしなかった

疑いたくなかったのかも知れない


「タキの奴は何処から来て何処に行くとは言ってはいなかったか?」


「申し訳ありませんアキヨリ様があまりに大変な状態でしたので

そればかりに気を取られておりました

もちろん あなた様の事は存じておりましたよ

だから私舞い上がってしまいまして」


シジマ家の領地から遠く離れたこの地で自分は一体何をしていたのだろう

しかしタキが迎えを呼んでくれているようだ

分かった事は殆ど無いがここに留まっていても良いのだろう

しかも自分を知っていたなどと言われて舞い上がってしまい

それ以上追及する気にはならなくなってしまった

彼も人の子である


「ところでこの寝巻きと水差しと言っていいのだろうか

俺に譲ってはくれないだろうか」


「うふふ 気に入っていただけましたか?

寝巻きは父の遺品ですからご勘弁下さい ですが滞在中はずっと着ていて下さって結構ですよ

水差しは差し上げます私が焼いたものですから」


「なんと そなた陶工であったか

素晴らしい

俺とたいして変わらぬ歳の頃であろうに

ここまでの物を作るのにどれだけ精進を重ねたことか」


「アキヨリ様こそ私とたいして変わらぬ歳の頃でしょうに武名は日の本中に響き渡っておりますわ

うふふ

私の腕など父に比べればまだまだ子供の泥遊びでございます」


「お父上を亡くしたのはいつの事だろうか さぞ苦労したであろう

身寄りは力になってくれる者はいるのか」


「父が亡くなってから二年になります

身寄りはおりませぬが父のお弟子様方が力になってくれます」


リッカは自分と同じ境遇だしかし自分には二人の兄そして叔父 沢山の友がいた 急にリッカが不憫に思えてたまらなくなった

同時にリッカの母の事が気になったがあまり根掘り葉掘り聞くのも気が引けた


「良かったら他の作品も見せてはくれないか」


「もちろんでございます リッカを褒めて褒めて褒めちぎって下さいませ

それに明後日窯入れの予定でございます アキヨリ様も是非ご覧になって下さいませ」


「本当か それは楽しみだ

是非見てみたい ああ心が踊る」


思い出せないここ数日の事などすっかり忘れ

心は焼き物に支配され急にそわそわし始めてくると今度は尿意でそわそわしてきた


「そっその厠はどこだろうか」


「ここにございます うふふ」


リッカは部屋の隅からやはり白い釉薬の美しい尿瓶を取り出し布団の中に差し込もうとした


「うー なっ何をする厠に行く!

アクヤ!起きろ!俺を運べ」


アクヤはぬっと起き上がると布団を跳ね除けアキヨリをうつ伏せにひっくり返し帯を咥え宙吊りにした


「おもてにあるのであろう案内してくれ」


「うふふうふふうふふうふふ

分かりました こちらでございます」


宙吊りになりながらアキヨリは大変な事に気が付いた


「もしや俺が眠っているあいだは?」


「はい私がおしめを替えさせていただきました うふふうふふ」


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