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六角の花   作者: フミ
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黒い腹は空きっ腹

アキマサは弟達を見送ると敵となり得る勢力を思い浮かべた。

まずは山一つ隔てた北にアトウ氏。


アトウはナリモトに服従していた豪族だが、

今回のナリモト攻めで 事前に調略し味方につけていた。


しかし出兵要請にも やれ持病が悪化しただ 、

日照りによる不作で兵糧が確保出来ないだと 、

あれやこれや言い訳をして未だ応じる様子は無い。

しかしナリモトとは元々結びつきは強くなく、

代々この土地を治めてきた勢力に従属してきた国人衆的な存在であった。


信頼のおけぬ味方というものは、敵より手間がかかるものだ。

アキマサのアトウへの対処とは、叔父ナリマサを三千の兵と共に送り込むというものだった。


彼等の出兵を促す為と、更に都とは反対側

西方の諸大名を牽制する為であった。


その西方の諸大名だが お互いにいがみ合っていて、こちらに関わる余裕などないだろう。


しかし用心に越した事はない。

敵に援軍があったとしても、叔父ナリマサを引き戻すことは良策ではないだろう。


残る可能性はアキマサと肩を並べるオアイ家臣団である。

オアイ ミナヅネは家臣達を震え上がらせる厳格さを持つが、

理不尽な怒りを撒き散らす様な事は一切無い人格者である。

見る人を魅了する洗練された風貌と美貌も相まって、個人的な恨みを持つ家臣の存在は考えにくい。

あったとしても、有力な家臣達は、皆各地で有力大名を相手に一進一退を続けていて身動きなど取れはしないだろう。


しかし彼らが敵となる可能性が無い訳ではない。

交戦中の敵大名と和睦するという手がある

そうした外交手腕があるのは、

サナガそしてナリカワ。


いずれも敵にまわせば厄介な大名だった。

考えたくは無かったが 何があってもおかしくない時世なのだ、

こんなはずではなかった などという言い訳など家臣達の骸は聞いてはくれないだろう。


最後は自分の家臣である、不満を持つ者がいない訳ではない。

いかに公正に論功行賞を行ったとしても、逆恨みの芽を摘み取るのは容易では無いのだ。


「此度の軍議でいぶり出してやる」


まだ見ぬ敵との内通者がいる。

確信めいたものをアキマサは感じていた、

彼が直々に都に放った諜報部隊が、予定を三日過ぎても未だ帰らぬのだ。

何かあったと決め付ける日数では無いが、何かあったと備えを始めるべき日数である。


「アキマサいかに処した」


全体的に重力に従順な体型の老人が賽銭箱に腰掛け声をかけてきた。


「大御祖父様 アキヨリを都に向かわせました。

三つの支城は早急に落とします。

イエナガと私で七日いや、五日以内に。

皆を招集し軍議といたした後、直ちに取り掛かる所存でございます。」


老人は満足そうに頷いた、老人の名は[デンユウサイ]。

彼ら三兄弟の曽祖父の弟で、早くに父を亡くし、若くして家督を継いだアキマサの後見人として今まで一族を支えてきた、シジマ家の知恵袋である。


「上々」


元々口数は多くは無かったが、最近さらにその傾向は強くなっていた。


しかし上に立つ者としての心得を欠いた言動には怒り狂って諌められた。


アキヨリとイエナガにとっての父はアキマサで、

アキマサにとっての父はデンユウサイであった。


「アキヨリが都に行ったら困るやつがおるのではないか〜」


今回の軍議の目的はそこにあった。

アキマサの諜報部隊からの書状は 都からの物が最後だった。


いずれも手練れの者で、滅多な事では全滅などはあり得ない。

彼らが既に地上の人でなくなっているとしたなら、

人に紛れ 存在感を道端の石ころとする、彼らの特徴など情報を流した者がいる。

石ころとて確かな特徴を知れば判別可能である。


「さて 嫌な仕事だ。」


皆が集まる前に何か腹に入れておく為、アキマサは炊事場に向かった。


つづく

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