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六角の花   作者: フミ
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どんな生き物でも寝起きは機嫌が悪い

しかも耳元で若い人間の女だろう甲高い声 必死なのだろうが こっちは疲れているのだ


しかもひどい頭痛で吐き気もする

アクヤはやれやれといった感じで何やらモゾモゾする自分の背中を振り返った


「まさか俺の背中に何かのせる気か?」


案の定人間の女が自分の背中に何かのせようと必死に引きずりもがいている


人間の女の良し悪しはよく分からないが風になびく長い髪は美しく思えた

そうとう重そうだ どこからそんな物引きずって来たというのだろうか。


女が引きずっているものそれは

アキヨリと供に戦場を駆ける時自分の足元に累々と転がっていたものだった


「俺に乗って良いのは日の本一の強者シジマ アキヨリだけぞ!」


気位の高いアクヤは身体を振って上半身が自分の背中に寄り掛かった人間の死体をふっ飛ばした


「なんてことを!あなたのご主人様でしょ!」


女の声にアクヤは はっとして自分のふっ飛ばした死体に目をやった


なんという事だろう自分がたった一人主と認めた

心を通わせた

苦楽を供にした

シジマ アキヨリが腹這いに地に伏せていた

生ける気が全く漂っては来ない

身体のどこにも力が入っていない


死体そのものだった


すぐさま駆け寄ろうと地を蹴ったが思うように力が入らない

それどころか吐き気が波状的に襲って来て胃の中のものをあらかた吐き出してしまった


そんな事はどうでもいいアキヨリが死ぬはずは無い近くに行けば その身に触れれば呼吸を脈を感じられるはずだ


力を振り絞り よろけるならば前によろけ進む力になれとばかりに呼吸を荒げ

十数歩をやっとの事で辿り着きアキヨリの顔に自分の鼻をぶつけるように押し付けた


「ああ…ああよかった」


僅かであるが息があった しかし今にも消え入りそうな弱々しい雀や鼠のような小さい呼吸であった


早くなんとかしなければ我が主は醜い物言わぬ骸となるのだ

アクヤの心を冷たい氷の槍が絶え間なく突き上げた


今度は顔に押し付けた鼻をアキヨリの身体の下に潜り込ませ

頭で持ち上げ首を伝って背中に乗せようと首を持ち上げた


だが上手く行かず落としそうになった所をすかさず女が支えてくれたので なんとか背中に乗せることが出来た


「ありがとう お馬さんお利口ね 辛いでしょうけどもう少し辛抱して

私のお家がすぐそこにあるのそこで手当てしましょう きっと良くなるわ」


この寒さだというのにうっすら汗をかいている

何故この女は見ず知らずの我々にこんなに必死になっているのだろう

アクヤが不思議に思っていると


「こっちよ お馬さん」


女はこっちだとアクヤの手綱を引いて歩きだそうとした


「ちょっと待てよ」


アキヨリの家臣達や仲間達がまだいるだろう

アクヤは足を踏ん張り振り返った



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