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六角の花   作者: フミ
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導き

このままでは 生き残った兵達まで失ってしまう

吹雪による遭難など

戦場で討ち死にする事を本望とする彼等には耐えられない屈辱であろう


「皆!松明を作ってくれ 燃える水の無い者はいないか?」


アキヨリがもう輪郭さえ見えない最後尾に聞こえるよう大声で叫ぶと

皆各々脇差しに布切れを巻き付け燃える水を染み込ませ松明を作った


「これで皆の所在は確認できる

後は俺が休める場所を見つけるだけだ

タキこれを皆に廻してくれ」


アキヨリは吹雪の中だというのに火打ち石から激しく火花を出し

いとも簡単に着火した松明をタキに手渡した

足を止め振り返って一つ一つ灯る炎を見つめていたが十二目が灯るとそれから先は一向に増える気配は無かった


「おーい!誰かおらぬか!」


十二目の炎辺りから叫び声が聞こえてきた


「おい!どうした!返答せい!」


「アキヨリ殿!拙者より後ろの者はおりませぬ!」


アキヨリ直属騎馬五百騎

数々の戦場を供に戦った

数々の強敵を撃ち破った

数々の困難を供に乗り越えた

それがたった十二

はぐれたのか疲れ果て行き倒れたのか それを確かめるには命を捨てて引き返すしかない


「おい!冗談は許さぬぞ!いつものようにふざけておるのだろう!

返事をしてくれぇぇい!」


タキはアキヨリが兵達を探しに引き返すのではないかと肩を掴んだ


しかし思いとどまったようだ

代わりに顔を伏せより集中して山小屋や炭焼き小屋に灯るであろう炎を探しているように見えた


「アキヨリ様?」


タキがそれでも心配になり顔を覗きこんで

そして後悔した

知っているアキヨリの顔では無かった


それから先アキヨリは一言も発さなかった

一刻程進んだだろうかアクヤが悪路に足を取られて少しよろけた

余程集中しているのかアキヨリは動きを合わせられず落馬しそうになった


「アキヨリ様!」


タキが慌てて支えると


「タキ!何か聞こえないか?」


「はっ!?そういえば何か吹雪く風の音だとばかり思っておりましたが」


頼りの山小屋は一向に見つからない

この天候だ追手ではないだろう

一縷の望みとばかりに音のする方に歩を進めると半刻ほどで音の正体が見えた


湯気がもうもうと立ち籠もり火薬のような匂いが鼻をついた

途切れ途切れに何箇所か熱湯であろう激しい水蒸気と供に湯が吹き出していた

間欠泉に行き当たったのだった


辺りはほんのり暖かかったが吹雪をしのげる訳では無かった


「アキヨリ殿!こちらに来てくだされ!」


声のする方に皆駆けつけると屈んで入れるくらいの洞窟があった


「ああ、これでやっと一息つける」


洞窟の中も暖かく眠ってしまっても凍死する事はないだろう

皆具足をほどく間も惜しんで眠りについた


少しでも吹き込む風から皆を庇おうとアキヨリは一番出口側で松明の灯りをかざし皆の顔を覗き

そして眠った

普段ならアキヨリが一番出口など皆許さなかっただろう

つまり普段の判断能力などかけらも無かったのだ


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