罠
「退けい!退けえぇぇぇい!!」
アキヨリの咆哮とほぼ同時
ドッパァァァァン!!
シジマの陣から三十間ほど港側で炸裂音と共に地面が吹き飛び
子供の拳ほどの飛散物が飛び散った
大砲の炸裂弾であった
それはアキヨリが睨む三門の大砲から放たれた
港には南蛮の軍艦が一隻いつの間にか現れていたのだ
敵陣を切り崩すのに全神経を向け察知することが出来なかったアキヨリは己の不甲斐なさを悔いた
「山側に退避する!!
急げ!
我等と敵船の間に敵陣を置くのだ!」
敵陣を盾にすればもう砲撃はできないだろう
「陣形など気にするな!急げ!急げ!殿は俺が務める!」
反撃に転じようとするアトウ勢をアキヨリ率いる騎馬五百が食い止める間
シジマ全軍は驚き飛び立つ鳥の群のごとく駆け出したが間に合わなかった
立て続けに大砲が火を吹き
狙いは徐々に正確さを増しシジマ の兵達を吹き飛ばした
「慌てるな!走れ!走れ!」
砲撃に負けないくらいの馬鹿でかいアキヨリの声に励まされ
大きな混乱無しに全軍山側に回り込む事が出来た
死者はおよそ五十
戦闘不能な怪我人は百と言った所だろう
まだ十分に勝機はある
「怪我をした者は退がっていろ!
勝利は目前ぞ!続けぇぇぇぇぇえい!」
敵陣を盾にとり 尚且つ乱戦となれば大砲など撃てるまい
アキヨリは最良の一手を打った筈だった
しかし砲撃は止まなかった
シジマ、アトウの兵は肉片となり吹き飛んだ
「外道があぁぁぁぁ!!
敵も味方も見分けがつかぬか!
退け!退けえぇぇぇい!」
最早退却する以外に手は無かった
アトウ勢も混乱している追っては来るまい 退却は難しく無いだろう
先ほどまで通ってきた間道目指し
今度はアキヨリを先頭に
狭い間道を通る為縦長に隊列し敵に背を向けなり振りかまわず走った
アキヨリが先頭に立つには理由があった
退却を阻むように山林から湧いて出るように武装した一団が姿を現した
伏兵だった
シジマ勢は完全に包囲された




