一番槍
翌朝アキヨリは直臣 五百を率いアトウ領を目指し出発した
山越えは道が険しくかえって行軍に時間を要するだろうと判断し山間の間道を選んだ
振り返るとトミナリ城を飲み込んでいた水が渦を巻き見る見る引いて行くのが見えた
「兄上 兄者 御武運を!
皆生きて又まみえようぞ」
三日程を要する道程をまた馬鹿騒ぎして
それでも急ぎに急いで
三日目の昼過ぎ
アトウの城を見渡せる高台に間道を抜け到着すると
アキヨリの耳に鬨の声と炸裂音
鼻には潮の匂いと硝煙
目にはアトウとシジマの旗印が飛び込んで来た
港を囲むように開けた土地で既に戦端が切られていたのだ
アトウ勢が城を打って出てシジマ勢を奇襲しているのかシジマ勢は押しに押されていた
「楔の陣!
皆疲れている所すまん!
アトウの背後より突貫する!
俺について参れ!
鬨の声をあげろ!
うおおおおおおおおお!」
アキヨリの愛馬アクヤが駆けに駆けると
皆 遅れまいと必死に続いた
すると馬術の得意なタキがすぐ後ろまで追い付き叫んだ
「アキヨリ様と一番槍争いいたす!」
「上等!槍に振り回され馬から落ちるなよ!」
アキヨリとタキそしてアキヨリ軍はアトウの尻に
噛み付き
蹴散らし
薙ぎ払い
敵陣の中程まで食い破り
それでもまだ勢いは衰えなかったた
アトウ勢は奇襲しているのは自分達であって奇襲を受ける事など予想もしていなかったのだろう
陣形は崩れ ついには真っ二つに引き裂かれた
「叔父上御無事でございますかー!」
見方の陣まで達するとアキヨリが叫んだ
兜は飛ばされ首にぶら下がり
返り血なのか自らの出血なのか朱にまみれて修羅のごときありさまである
「アキヨリか!
よくぞ来てくれた
最早これまでと観念した処であった!」
「陣形を立て直します!
押し切りますぞ!」
兜の緒を締め直し当然のごとくアキヨリが指揮をとり始めると
アトウの陣を貫いて来た味方勢が追い付いて来て
二つに切り裂いた敵を各個撃破する為両翼を広げるような陣形をとった
「進軍!」
アキヨリが再び先頭に立ち勝利は目前と思われた時だった
ドドドオオォォォン!!!!
耳をつんざくばかりの轟音が鳴り響いた




