躾
「大将首を取るなどと言う話は聞いてはおりませんでしたぞ!」
「だから すまなかったって言っているじゃないか
父上や兄上を侮辱されたのだぞ
黙っていられるか」
「問答無用!」
ゴチン!
「いってー!」
「リヨウがおらなんだら今頃は首だけとなっておったのですぞ!」
「怪我してたからさ戦うなよ
タキの所まで飛べって
途中で飛べなくなったら何処かに隠れてろって言ったんだよ
なのにあいつさぁ」
「言い訳にさえなっておりません
それに助けられてその言い草!」
ゴチン!
「あああぅ!」
「ご自分の御命なんと心得るか!」
「そりゃ本当にすまなかった
皆の気持ち痛み入った」
「素直でよろしい!」
ゴチン!
「ちょっと待ってくれよ!
今のは無しだよ素直に謝ったじゃないか
もう勘弁してくれよ頭がジャガイモになっちまうよ」
皆アキヨリとは君臣の間柄であるが
歳は五つから十ほど上で心情では弟であり
そんな彼が戦の度に己の命を粗末にするかのような蛮勇を見せるのが悔しくてたまらないのである
先祖から受け継ぐ炎を操る技を持つ子供はここ三代現れなかったし
戦場では皆を勇気づけ
自分に賜われた褒美などは惜しみなく分け与えてくれた
そんなシジマの至宝と呼ぶべき男が何故だか自分の命を軽く見ている
それが何故なのか正確に知る者はいなかったが知った事ではない
己の心情をゲンコツとして表現しなければ気が済まないのであった
そんな珍道中を復路でも繰り広げ
馬を乗り継ぎ昼夜走り通し
なんと三日足らずで本陣へと帰還する事が出来た
「一刻も早く兄上の元に参らねば」
汚れた身なりを改める間も惜しんでアキマサの所在を出迎えに来た家臣に尋ねた
「お早いお付きで御座いました
さすがはアキヨリ殿
殿は支城の攻略にご自身で指揮をとっております」
「リヨウはいかにおるか?」
「タキの奴が大騒ぎして典医に診せておりましたが大事ないとのこと
殿がお待ちです案内いたします
お急ぎを」
シジマ軍が総力で攻めているにもかかわらず残り一つの支城が落とせずにいるとの事だった
支城を改めるシジマ陣営に到着し帷幕をくぐると
身振り手振りで報告中のタキと困ったような顔で軍配を逆手に持ち
その手で顎を支え前屈みに座った具足姿のアキマサがいた
「兄上!遅くなりました!
タキお前は直接見た訳じゃないだろ!」
「十分早い
タキお前は下がって休め御苦労だった
アキヨリ早速話してきかせろ」
しかしタキはなかなか出て行こうとしなかった
「タキどうした?まだ報告する事があるのか?
後はアキヨリから聞くから良いぞ
疲れただろうゆっくり休め」
「恐れながら!拙者はリヨウを助け出したくだりを知りません
終始蚊帳の外でした
今聞きたいのです!この通りです」
「それは気の毒暫しそこにおれ
しかし儂が下がれと言ったらそこまでだぞ」
タキは感激してアキマサは先程とは違いいつものまばたきは一切せず どこか冷たさを漂わせるような真剣さでアキヨリの報告を聞いた
アキヨリが包み隠さず報告し終えると
アキマサは暫く顎をさすりながら空を見つめ まばたきを繰り返した
そして頭の整理がついたのであろう
「タキお前はもう下がれ
聞き耳をそば立てたら斬るぞ」
「はっ!はい!」
タキが飛び上がらんばかりに驚き立ち去ろうとするとアキマサは冗談だとばかりに笑って見せた
もちろんまばたき付であった




