二発と一発
駿馬十二頭を従えタキは海沿いの一本道を快調にとばしていた
行きは丁度この辺りでアキヨリが
痛んだ魚を食べ腹をくだしたイエナガの真似をして皆を笑わせていた
皆と楽しく過ごした時間そしてアキヨリの笑顔を思い出すと急に心細くなり涙が溢れて来た
死地に赴くに腹を括り動揺など微塵も見せない彼等だが
普段は普通の人間でありメソメソ ウジウジは日常茶飯事なのである
「アキヨリ様ー!」
たまらなくなりアキヨリの名を叫ぶと
「ピリョリョョョー」
聞き慣れた声が応えた
振り返ると空を覆わんばかりの猛禽がこちらに向かい飛んで来るではないか
いつもながら余りのバカでかさに遠近感がおかしくなる
「リヨウ!リヨーウ!無事だったか!よかったよかった!
丁度良いところに来てくれた
心細くて堪らなかったのだ
あーはっはっはっは!
…あっ!?おい!あぁぁぁー!」
リヨウの飛び方がおかしい
右に左に傾き見る見る高度を落として今にも落ちて来そうだ
タキは馬を飛び降りリヨウに向かって駆け出した
一町程走った所でついにリヨウは均衡を失い
地面と激突するかというところを俊足のタキは間一髪抱きかかえた
その時馬鹿でかいクチバシで横っ面を強かに打ち頭がクラっとしたが
「怪我をしているかもしれん!」
リヨウの身体をくまなく調べると翼に怪我を手当てした跡を発見した
たいした怪我ではなかったが僅かな怪我でも翼となると飛ぶ生き物にとっては一大事であろう
「よくここまで飛んできたな
頑張ったな よしよし」
リヨウだけ飛んで来たことにひどく不安を覚えたタキだったが
リヨウの差し出した右足に巻かれた手紙を読んてほっとした
「我等を待たず兄上の元へ急げ
我等の安否はリヨウに聞くこと
二度なら無事一度なら帰らず」
リヨウはタキの頭を二度巨大なクチバシで小突いた
その頃アキヨリも仲間達から一発ずつゲンコツを食らっていた




