リアス式心理状態
「追いますか?」
先程からずっとジョスイの隣で
三つ又の槍を構えていた男が言った
「トウドウか いつからそこにいやがった?」
トウドウと呼ばれた男は終始ジョスイの隣で彼を護衛し続けたというのに 気付かれてはいなかった
しかしその事で腹を立てる様子は微塵も無く
「追いますか?」
ただ繰り返した
「追ったって無駄だよ
第一何で追うってんだよ 見ろよあれをよ!」
アキヨリ達が去った後も野営地には地響きが鳴り響いていた
狂ったように軍馬が走り回っていたのだ
どの馬も尻の毛が焼け焦げていた
アキヨリの仲間達が連れ去る馬以外には
尻に焼けた短刀などを押し当て解き放っていたのだ
「追いますか?」
「ああ分かったよ!
はらわた煮えくり返ってんだろ!?
ちったあ顔に出したらどうなんだよ この能面野郎!…」
ジョスイは気まずそうにトウドウとの視線を外した
「あぁすまねえ俺も気が立ってたよ
行って来い無理するんじゃねえぞ」
トウドウは顔を歪めた
本人は笑ったつもりだったのだが
はたから見ると何か臭い物でも嗅いだように見えた
そしてジョスイに一礼すると走り回る馬の一頭に飛び乗り
膝で馬の腹を力任せに締め上げ無理やりに落ち着かせた
走り去ろうと馬首を返すとジョスイの言葉が肩を掴んだ
「暗殺じゃねぇよ手下を連れていけ
奴らこっちに気付いちまった
何するかわからねえ
きっともう本陣に向かった奴がいる
そいつにゃもう追いつかねえだろう
奴らの様子逐一俺に知らせろ!
後は好きにしな」
トウドウは表情一つ変えず出発の用意に取り掛かるのか姿を消した
トウドウはアキヨリが嫌いだった
派手で真っ直ぐで仲間に慕われ
何より笑顔が魅力的だ
サナガ陣営の裏の仕事を一手に引き受けるトウドウにはすべて持ち合わせないものだった
そして嫌悪と同時に憧れていた
何としてもアキヨリの命をこの手で断ち切りたかった
それはジョスイも同じだった
「クソガキ!
ああ腹が立つ!
せっかくかき集めた兵糧がよう!」
惨状を呈する我が陣営を眺めるとジョスイの脳裏に何故かオアイの顔か浮かんだ
「御館様の祟りか…
確かにそうかも知んねえな
この先そんなもんと戦う事になるんだろうな」
次にオアイの祟りの代表格アキマサのまばたきを思い出し
「予定は大幅にくるっちまったが最後に勝つのはこの俺だ!」
アキマサがどう打って出て来るか
頭を冷やして考えなければと
深呼吸して目を閉じるとアキヨリの尻が瞼の裏に映った
「ぬがあぁぁぁぁ!
クソガキ!絶対ぶっ殺す!
…でも死なねえで良かったよ…」
サナガ ジョスイは敵味方をキレイに仕分け出来ない男であり
それ故の謀反といえるのだろう
つづく




