子供の喧嘩
混乱を煽るように逃げ惑う兵達を追い掛けて
掴んでは投げ掴んでは投げしていたアキヨリだったが飛び道具には注意を払っていた
もう朝日は昇っていた狙い撃ちされたらひとたまりもない
さらにハッタリの効かない精鋭達の包囲網がジリジリ狭まって来るのは感じていた
暗い内に決行すれば難なく逃げられたのだが明るくなければ鳥目のリヨウは飛べない
もうじき仲間達が最後の一手を完了し こちらに駆けつける
諸々の理由でアキヨリには焦りがあったが
顔は満面の笑みだった
楽しくて仕方がなかった
その時ジョスイの声を耳にした
それは気分を害される事山の如しであった
始めは無視して脱出に専念しようと思ったが
あまりの白々しさに腹が立ち
一言 言い返さないと気が済まなくなった
「だったら何故リヨウを捕らえた!」
「其方の鷹が怪我をしていたので保護したのだ」
アキヨリが声の方を睨むと兵達の隙間からジョスイの姿が見えた
するとアキヨリはこれが返事だとばかりに肩に掛けた鎖を力の限りに投げつけた
リヨウを拘束していた鎖だった
ジョスイが青ざめると一人の屈強な身辺警護の兵が立ちふさがり全身に鎖を浴びた
そして間も無く声も出さず血を吐き息絶えた
「白々しいのも いい加減にしろ!
何故謀反など犯した!」
「あぁいい加減にさせてもらうぜ
何故ってなあ イロイロあんだよ
お子ちゃまには分かるめえよ!」
「貴様のような人を謀るしか能の無い軟弱者が天下人を殺めてよいと思っているのか!」
「なんだとぅ!
てめえだって相当な策士じゃねえか!
自分ばっかりイイ子ちゃんぶるんじゃねえよ!」
「南蛮に操られた傀儡が人の言葉を話すな!
貴様が討ち取ったと思っている御館様は影武者だ残念だったな!」
「あぁ?俺ぁ自分で首実検したんだよ
間違いねえよ
何度も何度も怒鳴りつけられた
あの方の首だったよ!」
「やはり貴様ぁぁぁ!絶対に許さん!」
「やはりって カマ掛けやがったな!
てめーどこまで知っててどこまで知らねえんだ!
親父もそうだったが兄貴もそうだ
このペテン師大名!」
「言いおったなあ!
父上兄上は貴様ごとき三下が口にしていいお方ではないぞ!」
アキヨリは完全に頭に血が昇ってジョスイ目掛けて猛然と駆け出した
「しめた!」
ジョスイも完全に頭に血が昇っていたが結果として彼の勝ちだった
「しまった!!」
アキヨリはジョスイまで後十歩という所で精鋭部隊に完全に包囲された
「かくなる上は胸座って進むまで!」
立ち止まるどころかさらに走る速度を上げ
槍を振りかぶるアキヨリに突然突風が吹き荒れた
アキヨリも取り囲んだ兵達も飛ばされないよう踏ん張り直さねばならない程の風だった
「!!!!」
声にならなかった
風などで槍を飛ばされる事などあり得ない
歴戦の強者の手から槍が失われていたのだ
つづく




