見参
とうとう犠牲者が出た
御輿を取り囲んでいた兵達は一体何事かと目を見張っていたが
ジョスイの事態を鎮静化させる為の指示も大して効果は無く
動揺から立ち直っている者は殆どおらずただ立ち尽くすのみだった
すると間もなく御輿から煙のような物が漏れ出してきた
火が燃えている訳では無いのだろう気流は上昇しておらず
辺りを覆い尽くし兵達の元にも漂ってきた
間も無く一人の兵が急に苦しみだし
血を吐き喉をおさえ倒れ込んでのたうちまわった
「毒の粉じゃー!近付くな毒の粉じゃー!」
と叫んで 逃げ出そうと走り出した兵がまた血を吐き倒れた
そうした者が次々に現れると兵達はまた大混乱に陥った
不思議な事に煙にまかれた兵は数多くいたが
倒れる兵は十人程でそれより増えることは無かった
だが度重なる異変でもう容易には立ち直るのは難しいだろう
「リヨウ飛べるか!!」
「ピイィィィー」
「ならば いょおおし!!」
怒鳴り声にも似た声が響きわたると御輿の戸が弾け飛んで
中から何者かが走り出してきた
アキヨリだった
腕には何か巨大な物を乗せており
その大きさはアキヨリより一回りも大きく
次の瞬間さらに何倍にも大きくなった
リヨウが翼を広げたのだ
「行け!リヨウ !」
アキヨリはリヨウを乗せた腕を思い切り振りかぶり大鷹を大空へ解き放った
「ピイィィィィィー!」
リヨウはあっという間に高度を稼ぎ鉄砲の射程外まで飛び去った
「一息吸えば閻魔の元ぞ
二息目は無いと思え!」
アキヨリは手に持ったズタ袋から
粉のような物を投げつけるように振りまいた
彼の口と鼻には手拭いが巻かれ肩には鎖が掛けられていた
「シジマ アキヨリこれにあり!!
友を解き放ち 逆賊成敗に参ったぁ!
見参!見参!」
ズタ袋を逃げ惑う兵達に投げつけ
リヨウに鉄砲を突きつけようとした兵から槍を引き抜くと
風切り音を放ち大袈裟に振り回した
「サナガ ジョスイ何処だー!
うおおおおおおおおお!!」
アキヨリが叫び声を上げ大混乱の只中に飛び込むと混乱は最高潮となり失禁 脱糞する者さえいた
先程血を吐き倒れた者さえ走り出していた
彼らの脳裏にはアキヨリの昨夜の言葉が浮かんだ
「次にこの祠のあちこちに積りに積もった埃を使う
最後に晩飯にする予定だったこのイノシシの血
煙に感付かれてしまうから焼いて食えなくなったが
血を使わせて貰おう
皆水筒に入れておいてくれ
燃える水と間違うなよ」
皆次の持ち場に走り出していた
「やろう ふざけやがって!
今そっちに行ってやらぁ
待ってろこのやろう!」
なんとジョスイはアキヨリ目掛けて走り出した
「殿何をなさいます!
危険です
思い直してくだされ!」
家臣が止めに入ると
「バカヤロウ!
あいつは逃げようとしてんだよ!
俺が時間を稼ぐから取り囲んで仕留めろ!
やりたいようにやられたがあいつをぶっ殺せばトントンだ
ビビるんじゃねえぞ !
あいつも人間だ刃物矢玉をブチ込みゃ死ぬんだ
言わなくても分かってると思うが
俺を絶対死なせんなよ!」
時折兵が跳ね飛ばされているのが見える
そこにアキヨリがいる
ジョスイは声の届くであろう距離まで辿りつくと言い放った
「アキヨリ殿とお見受けする
これは如何な仕打ちか!
我等はシジマ勢の援軍に参る所であるぞ!」
つづく




