ルグゥ/平成:妖魔戦線
ルグゥは京都事変からの撤退途中、島根原子力発電所を襲撃。
否、京都は単に陽動にすぎなかった。
原子力発電所を手に入れたルグゥはその場で燃料棒を彼女の持つ陽電子砲で破壊。
天狗たちによる風魔術により中国地方に高濃度の放射能汚染地帯を作り出した。
その濃度は計算されつくしたもので、ただちに人体に影響はないが、政府は避難勧告を出さざるを得ない濃度だった。
京都で陽動を起こし、島根で原子力発電所を襲撃し、放射能汚染で住民を強制的に立ち退かせる。
さらにその混乱に漬け込み、暫定的名支配地域を確立する。
それこそがルグゥの真の狙いだったのだ。
そして、ルグゥはネット上に声明を発表した。
「極東妖魔自治連合「百鬼」が指揮官、妙高山羅睺である。
今回の京都、島根における軍事作戦は我が軍によるものじゃ。
ついては、声明を発表させていただく」
旧軍に似たスタイルの軍服を着た美しい鬼娘。
少女に軍服というその姿は見るものに倒錯的な美と衝撃を与えることを計算されたものだ。
「おんしらの政府の言うとおり、我々は妖怪じゃ。人類の近縁種かもしれぬが、
人類と同種族ではない知的生命体じゃ。
この姿はメイクなどではない。冗談でもない。京都と島根の一件が冗談ではないようにの」
彼女は黒髪をめくって角の付け根を見せる。魅力的で不敵な笑顔だ。
「さてその異種族たる妖怪から人間に申したき事がある」
彼女は椅子に座り、後ろには数名のいかにも妖怪らしい連中が無言で立っている。
「人間達よ、飼い慣らさされた家畜の暮らしはさぞ退屈だろう?」
にやりと、蠱惑的に笑う。その仕草、表情は人をたまらなく魅了する。
「食い詰めて犯罪をすれば捕まり、商人でも政治家でも兵士でもなりあがれることはない」
時にサディスティックに、時に情熱的に革命家そのものの口調で日本人に語りかける。
「なぜか、金持ちどもは席を譲らないからだ。既得権益を奴らは決して手放さない」
ふう、とため息をつきそこから怒涛のように喋る。
「決まらない民主主義とやらに飽き飽きしては入ないか?
自らの権利ばかり叫び、果ては百姓を襲う熊を保護せよなどという妄言を垂れる物共にうんざりしておろう。これも全て平和ボケよ。社会が過保護すぎるのだ」
にやりと、笑顔が黒いものに変わる。それは全てを破滅させるような。
破滅を誘うような、そんな笑みだ。
「権利、平等、なるほどそれは確かに尊い。
じゃが、行き過ぎた権利と保護は人を何処までも厚かましくする」
その艶めいた唇が真実を含んだ毒を流す。
「妾が対するべき人間はそのようなものか?否!そうではない。
おんしら人間はもっと誇り高い生き物のはずじゃ、そうでなくてはならぬ」
打って変わって優しい、甘やかすような声色。
「ならばいっそ妖怪となって我らと共に戦おう。
我等が平和ボケを壊す脅威となってやろう
なあに、吸血鬼化から何から、妖になる手段はいくらでもある」
そして決断的に宣告する。
「この戦いは単に妖怪という民族の存亡をかけただけ物ではない」
決意と覚悟をにじませて。
「管理された文明社会への挑戦だ」
言葉を弄するも、その意思は本物で。
「この国を新しく作り直すための戦いだ」
そして、だからこそ心を揺さぶる。
「若者達よ、今こそ戦で一旗上げる時だ。
鬼となり妖となり、サムライになれ、ここにくれば力が手に入る」
そうして、動画は百鬼のロゴを残して終わる。
この日から、少なくない若者が島根に行く用意を始める事になる。




