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ハルマン/大正:鬼の血・結

望月探偵事務所。窓の外から見える夜外には、雪が降っていた。


「さてと、夢から覚めたか…みんな無事かな?しかし瑠璃君は……いない、か」

「美紀君もいないだと!?」

「柱さんは!?」


柱は望月の腕の中で静かに寝息を立てていた。


「大丈夫だ、眠っているだけだよ」

「……よかった」

「しかし瑠璃君も、あっち側か。あっちにふらふら、こっちにふらふらしてる子だから今更だけどね」


全員がきしむ体を伸ばしたりして目を覚ましている。

ふと、四葉が異変に気づいた。


「雪……? あれ?秋にしては早すぎるような……」

「ふむ…これは一体どうした事でしょうかね、時間がずれたかのようです」

「そのようだね、どうやら大分長い間眠ってたか、もしくはあの道化の術か……」


皆、窓に近づいて外の様子を見る。

明らかに秋の装いではない。商店には「謹賀新年」と休業の張り紙が見えた。


「とすれば今は大正12年!?時間は無いようですねえ」

「ああ、軍が大きく動く…」

「訳が、わからない……事態は最悪、ですね」

「ふむ…ふむ。なるほど、我々を盤上から外すのが目的だとすればそうでしょう」

「完全に、置いていかれたな。これは」

「ちっ、軍に連絡を……いや直接出向く!」


大悟が外套を身につけ外に向かおうとする。

そのとき、柱がううん、と声を上げて目を覚ました。


「具合はどうかな、柱君」


ぼんやりと、トランス状態のような夢うつつの声で柱はつぶやく。


「また、あの変な夢を見てました……何かが帝都を覆っている。でも何かが外から入ってくる。

帝都の、関東中の霊が、英霊が騒いでいる?

張られた……結界。そして――

始まる……。帝都……いや、関東、日本……世界を巻き込むような、大きなうねりが……!」


その声に大悟が足を止める。

四葉がぞっとしたようにつぶやいた。


「関東中の霊が動いてるなんて、そんな」

「時既に遅し、か…」


望月が唸る。大悟が吼える。


「いや…まだ遅くない!俺達に今出来る最善の手を尽くすんだ」


ハルマンが淡々と思索に入る。


「とににかく現状把握が第一でしょう。結界は張られたと成れば…」

「お父様の所にも一度戻りましょう。情報が多すぎる」


そこに、外から男の声が聞こえる。スピーカーで拡大された、大音量だ。


『大正一二年一月一日! 只今を持って! 帝都に戒厳令を敷く!

一般の方々は軍に従って! 移動を開始してください!』


今度こそ、大悟は動き出した。それぞれがぞれぞれの手段で探偵事務所から出て行く。


「戒厳令だと!俺は磯村大佐と連絡を取ってみる!」

「こっちは市井で情報を集める! 先走るなよ大悟!とりあえず合流場所は…四葉さんの家でいいかな?」

「分かりました、では私の離れがありますので、そこで落ち合いましょう」

「襲われたらみんな、全力で逃げるんだよ」


四葉が柱の手を取って走る。


「柱さん! 私たちも一度家に戻りましょう。大丈夫です。何も起こりません、起こさせません」


(お父様、無事で居てください!!)


思いがそれぞれによぎる。


(何があった……北奥大将…何を考えている…いや、迷ってる暇はない、悪はすべて俺が切る!)


魔術師たちはつぶやく。


「さて、足で稼ぐ。地味な仕事こそ探偵の真骨頂……かな」

「私は私として動かねばならなくなりましたねえ……しかし、いかほど猶予が残っているか」


そして、時は決着に向かって加速する。

走れ、大正の魔術師の魔術師たちよ!


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