ハルマン/大正:恐竜の住む島・結
船のところまで駆け抜けてきた一行。
振り返ると城はすでに跡形もない。
「王を失った城は、ただ朽ち果てるのみ……ですね」
船には、船を守っていた面子がそろって手を振っている。
ハルマンは天道をテウルヒアの前に突き出す。
「さて…天道少佐はここに、彼の計画はあのとおりです。これでよろしかったでしょうかね?」
「噂の恐竜も、……目撃者くらいはまだ出るだろうけれど、もう証拠は出ないだろうね」
望月も満足そうに続ける。それはまさに一つの冒険を終えた少年の笑みだった。
「うむ。こやつは軍に任せるとしようか……」
「いえ…彼には高石さんの機関に入っていただくのが良いかと」
「そうだな、それがいいのかもしれん」
テウルヒアは静かに微笑む。
「軍部の方もいろいろ込み合っているようですしね…非正規機関員が必要でしょう?」
「ああ、俺もそれでかまわない」
大悟がうなずき、この件はそういう始末と相成った。
「おや、拳銃が彼の懐から出てきたよ」
自殺をされないように懐をあさっていた望月が拳銃を出して見せた。
「その拳銃は『う゛ぁるむんく』と一緒にさせてやれ、それが彼と…四葉さんの曾祖母さんの想いの為だ」
「彼は……」
四葉は言葉を続けようとするが、うまく形にならない。
「男には、伝えきれない想いと言う物があるんだ…わかってあげてくれ」
「……はい」
大悟が静かに四葉を抱き寄せる。望月とハルマンが笑う。
「あーーーー!!?」
そこで、豪一の豪快な声が聞こえた。
「さて……この件は、なかったことになるわけですが。彼はどうしましょう」
「まあ、その……いつものように、適度に悔しがって頂ければ良いのではないかな」
「一応尻尾くらいはある。それで我慢してもらおう」
「まあ、お手柔らかにね……」
相も変わらず適当な扱いをされる豪一であった。
□
さて、あの島の事件から一ヶ月経ったわけだが四葉の曾祖母はまだ生きていた。
だがずっと床に伏せており言葉も喋れないような状態である。
医者からはまだ生きているのが不思議なくらいだと言われた。
「曾祖母様……」
そうして、今夜が山であった。
豪一も今日ばかりは神妙な顔で立っている。
四葉は一穂の手を握っているが、握り返すその手には力もなく。
ただ、か細い息が聞こえている。
豪一が黙ってただ気遣わしげな目線を四葉に送った。
「……大丈夫です」
四葉はただ目を伏せてそういった。
曾祖母は、力のない目で四葉をただ見つめている。
「四葉はまだ迷いがありますけど、それでも、進んで、行きます、から…」
一穂は静かに笑った。
「おばあ、ちゃん……」
涙目で笑いかえす四葉だが、握られた手からフッと力が抜けたのが解った。
「あっ……」
豪一はただ黙って部屋を出て行った。今夜ばかりは彼も苦い顔であった。
「ありがとう、おばあちゃん……本当に、ありがとう」
そうして、ただ一人が残された。
□
「うむ、ハルマン君。確かなようだ」
「ええ、ヴァルムンクは間違いなく四葉さんの身に宿りました。
テウルヒアさんはあなたとの約定を守りましたよ」
「……ああ。一穂様の願いも遂げられた。今回は世話になった」
「いいえ、私は何も。では、良い夜を」
「ああ……」
豪一は電話を切った。
魔術師は今夜も暗躍しているらしい。
「受け継がれる魂、か……三根。お前の子はまっすぐに育っているよ……」




