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守るべきもの(4)


 楓は空の涙(スカイティア)を持つ手に力を込める。


「楓。大人しく、それを渡してちょうだい」

「嫌」


 楓はきっぱりと拒絶する


「無駄な抵抗はよした方がいいわ。私、針の扱いはプロなの。こんな小さい針だけど、あなたの喉を貫いて殺すことも出来ないわけじゃないわ」

「でも、ルナはそんなことしないわ」


 ルナの言葉に、楓は即座に言葉を返す。


「するわよ」

「しない。絶対にしないっ。ルナがそんなことするはずないっ」


 楓は激しい口調で言い放つ。

 頑なな楓の言葉にルナは眉を顰め、楓が持っていた空の涙(スカイティア)を素早く奪い取る。


「きゃあっ」


 ルナは空の涙(スカイティア)を手に取ると、そのまま楓を突き飛ばす。

 よろめいた楓を、綜一狼が即座に動き抱き止めた。


「本当に嫌になるわ。あなたのそういうところが、あの人にそっくりで嫌になるっ」

「ルナ?」


 突き飛ばされたのは楓のはずなのに、ルナの方がよっぽど痛そうな顔をしている。

 眉を顰め、怒りと悲しみと、色々な感情を取り合わせたかのようなそんな表情。


「仕方がないのよ。これはあの人の、聖の命令だから。例え、聖があの人じゃなくても、私はやはり彼には逆らえない」


 ルナは俯きゆっくりと言葉を紡ぐ。


「ルナも、もう一人の聖を知ってるのね?」

「楓には前に話したことがあるわよね? 私の報われない恋の相手。私はあの人のためだったら、命だって捨てられるわ」

「だったらなおさら、今の聖に空の涙(スカイティア)を渡しちゃだめだよっ。もう一人のヒジリはこんなこと望んでない」


 今の聖は冷酷だ。

 人を傷つけることなど何とも思ってはいない。

 空の涙(スカイティア)を手に入れるためには手段を選ばない。

 そんな相手に、空の涙(スカイティア)を渡すなど、あの優しいヒジリが喜ぶはずはない。

 楓の訴えにルナは顔を背ける。


「あの人がもっとも気にかけている少女が居る場所だから、ここに来れば、あの人が戻ってくるかも知れない。私は賭けをしたの。けれど、あの人は消えてしまった。賭けは私の負け。今は、あの男に従うしかないのよ」

「まだ消えたわけじゃ……」

「綜一狼っ」


 緊迫するその場に、唐突に守屋が現れる。

 ちょうど楓と綜一狼のすぐ目の前。

 隣りには、ぐったりとした様子の静揮の姿。


「静ちゃんっ」


 守屋の肩に掴まり俯いている静揮は、楓の呼びかけにも反応がなかった。

 完全に気を失っている。


「どういうことだ? 守屋」


 ジロリと守屋を睨み、綜一狼は威圧的に言葉を放つ。


「俺はちゃんと止めたぞっ。お前の敵う相手じゃないし、逃げようって。でもこいつ、人の話全然聞かないし、何度やられても向かっていっちまうし。気ぃ失ってやっと、とっ捕まえてここまで運んできたんだからなっ」


 綜一狼の視線に思わずたじろく守屋。


「で、何でお前は無傷なんだ? その上、お前がここに飛んできたら、奴にここの場所が分かってしまうだろうが」

「そんなこと言っても、俺この学園に馴染みねぇしどこに飛んだらいいか分かんなかったんだよ。知ってる奴っつたら綜一狼と姫さんくらいなもんだし。俺の能力は移動だけなんだっ。あんな化け物みたいに強い奴と戦えるわけねぇじゃんよっ!」


 睨みをきかせる綜一狼に、守屋は必死になって弁解をする。


「最悪の状態だ」


 そんな守屋を無視して、綜一狼は額を押さえ呟いた。


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