ずっと好きだった(2)
しかし、差し出され方はどことなくギコチナク、躊躇を感じる。
「いいの?」
どこか不自然なその空気に、思わず確認を取ってしまう。
「当たり前だろ? へ、変な風に考えるな。た、ただ、危ないだろやっぱり。コケたら痛いし、怪我するし。どこかに傷でも付いて嫁に行けなくなったら困る……はぁ」
妙な言い訳をこねた上に、『嫁に行く』という単語に、自分で言って、そして自分で落ち込む静揮。
「う、うん? じゃあ、手繋いで行こう」
静揮の不自然な態度に首を傾げつつ、楓は静揮が差し出した手を取る。
ドクンッ。
楓の手が触れた瞬間、静揮の心が音を立てる。
(うわぁ。なさけないのな、俺)
静揮は思わず苦笑する。
たかが、手と手が触れている。
ただそれだけのこと。
なのに、どうしようもなく気持ちが高ぶる。
昔は、小さく震えていた楓の手を何の気も無く、いつも握っていた。
それは楓が『妹』だったから。
しかし、今目の前にいる楓という存在は『好きな人』なのだ。
もうずっと昔から気が付いていたはずなのに、改めて突きつけられたその事実にうろたえる。
逃げ出せるものなら、今すぐこの場から逃げ出したい。
そう。自分が、『優しい兄』でいる今のうちに。
「何だか昔に戻ったみたい」
歩き出して暫くして、楓はクスリと小さく笑う。
「え?」
「ほら、昔はいつも静ちゃんと一緒だったじゃない? いつも手を繋いで、一緒に色んな所に遊びに行ったよね」
「そうだったな」
チョコチョコと、どこに行くにも後ろから付いてきた楓。
あの頃もすごくかわいらしかった。
思えばあの頃から、自分が守るんだという意識はあった。
それが、恋心なのだと気が付いたのは、もっとずっと後のことだが。
「昔の楓は、ともかく俺と手を繋ぎたがったよな」
そうしていなければ、まるでどこかに行ってしまうと言わんばかりに。
実際、両親と死に別れた楓の中には、無意識にそんな気持ちがあったのかもしれない。
「何だか、静ちゃんの手、大きくなった気がする」
「当たり前だろ。背だって、楓より二十センチ以上高いんだからな」
「静ちゃんてば高くなりすぎだよ。昔は同じくらいだったのにずるい」
不満げに楓は言葉を漏らす。
「そう言われてもな。勝手に伸びちまったんだし。それに、楓は女なんだし、小さいほうがかわいいって」
「だめなのっ。私の目標は透子さんだもん」
同年代の女子より子供っぽく見られることが多い分、スラリと背の高い大人っぽい女性に、楓は憧れていた。
身近にいる透子は、正に楓の理想像だったりする。
真剣に言う楓の姿がかわいらしくて、静揮から思わず笑みが零れる。
「あー! 静ちゃん、今笑ったでしょ!?」
「あはは。悪い。悪い」
そんな他愛もないことを話しながらも、握り締めた手から伝わってくる楓の体温を、妙に意識してしまう自分がいることに、静揮はと惑う。
この手をずっと離したくない。
そう思ってしまうのは、自分の我侭なのだろうか?
「男の人ってやっぱり透子さんみたいな人が好きなんでしょ?」
徐に、楓はポツリと呟いた。




