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宝探しの始まり(1)

 何だか大変なことになった。

 楓はため息を付く。

 自分が言い出したにしろ、相手はあの嘉神綜一狼。

 史上最強の相手を敵に回したものだ。


(あんなこと言うつもりじゃなかったのに)


 綜一狼とあんな風に言い争ったのは初めてのことだ。


「楓! もうっ。またボーとしてる」


 楓の席に来たルナが口を尖らせる。


「あ、ルナ。どうしたの?」

「それはこっちの台詞。さっきから呼んでたのに、ちっとも気が付いてくれないし」

「ごめん・・・・・・」

「まあ、いいわ。それより! おもしろいもの見つけたの。今日の放課後、コンピュータルームに来て」


 途端に楽しそうにルナは言う。


「なぁに?」

「それは来てからのお楽しみ」


 首を傾げる楓に、ルナは口元に人差し指を当ててウィンクをしてみせる。


(何だろ一体?)


 どこか含みのある笑いが気になるところだが、今の楓にはそれに気が付く余裕はなかった。


「あ、静ちゃん」


 放課後。

 楓は捜し人を廊下の片隅に発見する。

 隣りには綜一狼もいる。

 一緒に何やら熱心に話しこんでいたが、楓の姿にピタリと話をやめる。


「どうした、楓」

「あのね、今日一緒に帰ろうって言ってたでしょ?」


 綜一狼の存在に妙に居心地の悪いものを感じながら、楓は静揮に言葉をかける。


「悪い、楓。今日は一緒に帰れなくなっちまった」


 楓より早く静揮が口を開く。


「え?」

「これから寄るところがあるんだ。遅くまでかかりそうだし夕飯はいらないから、楓から春重さんに言っといてくれるか?」


 髪の毛をくしゃくしゃと混ぜ返しながら静揮はバツが悪そうに言う。


「それって綜ちゃんも?」


 隣りにいる綜一狼に視線を向ける。


「……あぁ」


 綜一狼は短く答える。


「そうなんだ」


 妙な気まずさを感じて、楓は綜一狼からすぐに視線を外す。


「そういうわけだから、悪いな」

「うん。でも、二人一緒なんて珍しいね」

 

 基本的に灰汁の強い二人だから、滅多なことでは行動をともにはしないのに。


「まあ、何だ。男同士で色々とだな……」


 もごもごと妙に言い訳をする静揮。


「余計なことは言うな」


 それを遮り、綜一狼は静輝にそう言いながら軽く睨む。


「行くぞ。静揮」

「あ、おいっ。じゃあ、楓は早く帰れ」


 サッサと歩き出した綜一狼の後を、静揮が慌てて追いかける。

 二人が去り取り残された楓は妙な疎外感を感じる。

 素っ気無い綜一狼の態度。

 楓は小さく胸が痛むのを感じた。


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