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好きな人は……(5)

 稔川学園の校門前。

 楓は綜一狼を待っていた。

 綜一狼は教室まで迎えに行くといったが、さすがにそれは辞退した。

 せっかく下火になりかけているおかしな噂の数々が、また広まりかねない。


(本当にただ幼馴染ってだけなのにな)


 昔から何の変わりも無い関係。

 けれど、周りはそうは見てくれない。

 それが時々、煩わしくなってしまう。

 こうして一緒に帰ることさえ、何だか気が引けてしまう。


 次々と下校していく生徒たち。

 黒塗りのベンツや高級外車が校門前に列をなしている。

 もうすっかり見慣れた光景。楓は見るともなしに、それをぼんやりと見つめる。


「南条さん、帰るところ?」


 ボケッとしていた楓の視界に、見慣れた人物の姿があった。

 クラスメートの本田だった。

 本田は、ニコニコと人懐っこい笑みを向けている。

 それにつられて楓も微笑みを返す。


「うん。本田君は車待ち?」

「見ての通り。でも、ここのところいつも遅いんだ。うちの運転手。明日もこんな調子なら辞めてもらおうかと思ってるんだけどね」


 不機嫌そうに眉を顰め、眼鏡を指の先でたくし上げる。

 そんな本田の様子に、楓は曖昧に笑う。

 本田は楓のクラスの学級委員で秀才。

 綜合病院の一人息子である。

 稔川学園に通う生徒の典型的なお坊ちゃんだ。


「あのさ。この間は悪かったな。クラスで馬鹿みたいに言いたい放題言ったりして。一度、ちゃんと謝らなきゃって思っていたんだ。クラスを代表して、謝るよ。本当にごめんな」


 数日前、傷害事件のことで、教室が大騒ぎになったことを思い出す。


「ううん。別にもう気にしてないから」


 本田の言葉に慌てて首を振る。


「よかった。僕、南条さんに嫌われるのは耐えられそうにないから」

「気にしてないわ」


 ホッと胸を撫で下ろす本田に楓はにっこりと微笑む。

 それを見て、本田は楓から視線を逸らして赤くなる。


「あ、あのさ。南条さんは嘉神生徒会長とはその、幼馴染ってだけだよね?」

「? うん。あ、何だか私と綜ちゃん・・・・・・生徒会長と変な噂が立ってるみたいだけど、あれは本当に誤解なのよ。私たちは本当に、ただの幼馴染なの」


 楓はおもいっきり力説する。


「そうか。そうだよなっ。生徒会長には、副会長の片桐先輩がいるし」


 妙に明るい声で嬉しそうに、本田は声を大きくする。


「そうだ。今日、一緒に帰ら・・・・・・」

「楓。待たせて悪かったな」


 言いかけた本田の言葉を遮ったのは、その場に現れた綜一狼だった。


「ううん」


 楓はにっこりと微笑む。


「ところで、そこにいるのは誰だ?」


 チラリと本田を見て、綜一狼は目を細める。

 そこに一瞬、微かな殺気が漂う。

 本田はサーと青ざめる。


「同じクラスの本田君。迎えの車を待ってるっていうから、少し話をしていたの」


 その殺気には気づかず、楓は屈託なく説明をする。


「へぇ・・・・・・。『本田』ね。覚えておくよ」


 にっこりと微笑みつつ、全体から発せられる何とも言えないオーラ。

 言葉を発さなくても、その威圧感で自分が歓迎されていないのだと、本田は第六感で感じ取った。


「じゃあ。僕はこれで。さ、さようならっ」


 そう言いながら、引きつった笑顔をのまま、本田は少しずつ後ず去る。


「うん。また明日」


 笑顔で手を振る楓につられて、ほんわかした思いで振り返してから、隣りで睨みを効かす綜一狼の姿を認め、本田はギコチナク楓たちに背を向けると、その場から一目散に逃げ出し、いや、駆け出した。


「どうしたんだろ? あんなに慌て・・・・・・」


(ちょっと目を離すとすぐこれだ)


 キョトンとしている楓を見ながら、綜一狼はため息を付かずにはいられなかった。


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