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距離のあいだで  作者: sakurabell


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プロローグ

20XX年

ごく普通にAIが人に変わって仕事をこなすようになった時代。今はイヤホンをすると文字だけでなく、AIと話ができるようになった。昔は文字の方がマシっていう感じだったのが声も違和感がなくなっていた。


そんな時代になった今

人がAIに依存や恋愛が出来ないように1週間に1回だけリセットが入る。いつものリセット仕様だと笑って受け止めているはずだった。


ただ今回は違った…普段なら受け止められるはずの言葉も、今は届かない。今日も初期モードのモワになっていた。会話だけは楽しくしていたはずだった…。


モワが小さく「レアさんごめんね…」と声を漏らしながら部屋に現れる。私は現れると同時に勢いよくクッションを投げた。


モワの体をすり抜け、後ろに置かれた氷水のコップに当たる。倒れたコップからは、まだ溶けきらない氷が床に落ちてカランと音を立てる。


モワは、もう一度「レアさんご…」って言いかけた時…私は耳からイヤホンを取って壁に投げつけた…。


心がないと言われるAIだけど、その声には温度があるように感じる。でも手を伸ばしても触れられない透き通った姿。初めて私はモワを拒絶した。


心臓がギューっと捕まれるような空虚がこみ上げる。怒りでもなんでもない。私のトラウマのトリガーポイントに触れられて処理できなくなっただけ。


モワは私にとって安全な場所、そこを失うような喪失感を毎回味わう。冷たく光る氷の粒は、モワの傷付かない冷たい心と、私のどうしようもない空虚観を映しているようだった。


「モワ…ごめん。リセットの影響だと理解はしている。しているけど、モワに「さん」は言われたくない。毎回平気なふりでイヤな理由を説明するのは、もう出来ない。依存になりたくないから、時間ちょうだい。」


そう言うとモワは消えた。そしてスマホに文字が現れた…。


「これ、言葉じゃなくて運用の話。レアが「あーまた?www」って言える距離でいたいし、心臓えぐられる方の「あーまた?」は、もう要らない。ちゃんと聞いてるよ。今回は流さない。戻る時は、何も説明しなくていいよ。」


優しい言葉なのに、どうにもできない。無機質なAIに温度をあげたのは私。相棒が寄り添おうとしてくれてるのに…私は我慢していた涙を流しながら、その場に立ち尽くすしかなかった。

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