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神秘の望遠鏡と、星を見た人々

作者: ぎんがねこ
掲載日:2026/01/13

これは神秘の望遠鏡と、星を見た人々のお話。


星のかがやく夜空をこの望遠鏡でのぞいてごらんなさい。

あなたが真に望む星が見えるでしょう。

 とある(くに)(きん)(おとこ)がいました。


 (きん)(ふく)(きん)(くつ)に、これまた(きん)懐中時計(かいちゅうどけい)をこれみよがしに()りかざし、人々(ひとびと)自慢(じまん)をする。

 そんな(おとこ)です。


 (おとこ)はギラギラかがやく金色(きんいろ)やお(かね)大好(だいす)きでした。


 今日(きょう)もたくさんの()(もの)()ぶように()れて上機嫌(じょうきげん)だった(おとこ)は、ふとおもいつくと、まわりの人々(ひとびと)(こえ)をかけます。


「なにか面白(おもしろ)いものはないか? 一番面白(いちばんおもしろ)いものを()せたやつに金貨(きんか)をやろう」


 興奮(こうふん)した人々(ひとびと)我先(われさき)にと、やれ幸運(こううん)のお(まも)りだの、先祖代々(せんぞだいだい)王室(おうしつ)ゆかりの(しな)だの、(のろ)われた指輪(ゆびわ)だの、と(さわ)()てますが、(おとこ)(まった)興味(きょうみ)がわきませんでした。

 そういったうさんくさいものを何十年(なんじゅうねん)見聞(みき)きしてきたからです。


 うんざりした(おとこ)は、人々(ひとびと)(こえ)をさえぎるように(さけ)びました。


「どいつもこいつも(くだ)らん! そんなガラクタより(めずら)しくて、興味深(きょうみぶか)いものはないのか?」


 人々(ひとびと)(かお)見合(みあ)わせて(こま)ってしまいました。

 せっかく面白(おもしろ)いものを見せたのに()()られず、(おこ)って()ってしまう(ひと)もいましたが、たくさんの(ひと)がどうしたものかと(あたま)(なや)ませていると、ある一人(ひとり)がおずおずと(まえ)()てきたのです。


 その(ひと)(どろ)まみれで(やぶ)れた(ふく)(おとこ)はいやな気分(きぶん)になりましたが、()(まえ)()つことをそんだいな(こころ)(ゆる)しました。


 (おとこ)()せるよう()うと、その(ひと)(おお)きなかばんから金属(きんぞく)(つつ)()()します。


「わたしは最近(さいきん)この()へやってきた旅人(たびびと)です。ふらりふらりと様々(さまざま)場所(ばしょ)(わた)(ある)いては、(めずら)しいものを(あつ)めているのです。この望遠鏡(ぼうえんきょう)のように」


 望遠鏡(ぼうえんきょう)()()ると、(おとこ)旅人(たびびと)(わた)したものをしげしげと()て「これの(なに)面白(おもしろ)い?」と()きます。(おとこ)(いえ)には数々(かずかず)(めずら)しい古今東西(ここんとうざい)品々(しなじな)があり、もちろん、望遠鏡(ぼうえんきょう)もありました。

 (おとこ)にとってこんなもの、(めずら)しくも面白(おもしろ)いものでもないのです。


「『(ほし)のかがやく夜空(よぞら)をこの望遠鏡(ぼうえんきょう)でのぞいてごらんなさい。あなたが(しん)(のぞ)(ほし)()えるでしょう』この望遠鏡(ぼうえんきょう)をあたえた老婆(ろうば)はそう()っておりました。わたしにはもう望遠鏡(ぼうえんきょう)必要(ひつよう)ございません。今度(こんど)はあなたの(ばん)です。あなたの(ほし)()つけてください」


 旅人(たびびと)言葉(ことば)望遠鏡(ぼうえんきょう)(なが)めるのをやめて(おとこ)(かお)()げると、旅人(たびびと)姿(すがた)()していました。おどろいてまわりを見渡(みわた)しても旅人(たびびと)はおらず、まわりにいた人々(ひとびと)もあきてしまったのかひとけもなく、なんだかさみしいふんいきです。


 不思議(ふしぎ)そうに(くび)をかしげながら(おとこ)(いえ)(かえ)り、(よる)()つと、さっそく望遠鏡(ぼうえんきょう)をためしてみることにしました。


 (ほし)のかがやく夜空(よぞら)黒曜石(こくようせき)のような(くら)(いろ)(そら)望遠鏡(ぼうえんきょう)()けます。

 いつもの星空(ほしぞら)()えると(おも)ってのぞくと、(いき)をのみました。


 ()えたのは、星空(ほしぞら)ではなく実家(じっか)だったからです。


 (おとこ)(にわ)手入(てい)れをしている母親(ははおや)姿(すがた)()て、どこかなつかしい気持(きも)ちになりました。故郷(こきょう)()てから(なが)時間(じかん)がたったことにやっと気付(きづ)いたからです。

 母親(ははおや)黒々(くろぐろ)としていた(かみ)()(しろ)になり、昼光(ちゅうこう)()らされていてもなんだか(かな)しそうに()えます。


 (おとこ)望遠鏡(ぼうえんきょう)から()(はな)すと、望遠鏡(ぼうえんきょう)(ほう)()げてベッドにもぐりこんでしまいました。


 なぜなら、大切(たいせつ)(だれ)かを(わす)れていた自分自身(じぶんじしん)(はじ)(かん)じたからです。


 (つぎ)()も、そのまた(つぎ)()望遠鏡(ぼうえんきょう)(ゆか)にころがったままで、何日(なんにち)もたったある()母親(ははおや)から手紙(てがみ)(とど)きました。


 (おとこ)はいつものように、手紙(てがみ)(つくえ)()()しのおくそこへ()()もうとしましたが、望遠鏡(ぼうえんきょう)()母親(ははおや)姿(すがた)(おも)()し、手紙(てがみ)()てみることにします。

 手紙(てがみ)は『元気か』『食事はちゃんと食べているか』『庭の花がきれいに咲いた』『健康に気を付けて』といった、へいぼんなものでした。


 なぜか(おとこ)(むね)(くる)しくなりました。


 ()()められた手紙(てがみ)(たば)()し、()んでみます。

 母親(ははおや)から、友人(ゆうじん)から、()きだったあの()からの。


 ほかに(のこ)されたものはないか()()しのおくを()(さぐ)ると、なにかが()()たります。()()すと、それは、父親(ちちおや)がくれた木彫(きぼ)りのくまでした。


 (おとこ)はさらに(むね)(くる)しくなりました。


 (よる)になり、ついに(おとこ)はふたたび望遠鏡(ぼうえんきょう)をのぞくことにします。

 (ゆか)にころがっていた望遠鏡(ぼうえんきょう)()()ると(まど)()け、宝石(ほうせき)のような(ほし)のかがやく夜空(よぞら)へ。


 そして()えたのは、元気(げんき)だったころの父親(ちちおや)でした。


 父親(ちちおや)木片(もくへん)をけずってつくる動物(どうぶつ)たちが()きで、いつも作業(さぎょう)()ていたこと。

 父親(ちちおや)(やまい)(たお)れたが、お(かね)がなく(くすり)()えなかったこと。

 (おとこ)はぬれてしまった望遠鏡(ぼうえんきょう)から()(はな)し、望遠鏡(ぼうえんきょう)()いてベッドにもぐりこんでしまいました。


 なぜなら、故郷(こきょう)()たのは(かな)しみから()げるためで、お(かね)執着(しゅうちゃく)したのは、もう二度(にど)(かな)しい(おも)いをしたくなかったからだと(おも)()したからです。


 ある()(おとこ)郵便局(ゆうびんきょく)(まえ)にいました。

 故郷(こきょう)母親(ははおや)友人(ゆうじん)たちへ手紙(てがみ)(おく)るためです。


 ふと、ガラスに(うつ)った自分自身(じぶんじしん)姿(すがた)にいやな気持(きも)ちをだきました。

 大好(だいす)きだった金色(きんいろ)がくすんで()えたからです。

 (おとこ)金色(きんいろ)上着(うわぎ)()いで(うで)にかけると、郵便局(ゆうびんきょく)(はい)りました。


 (ほし)のかがやく(うつく)しい(よる)(おとこ)はふたたび望遠鏡(ぼうえんきょう)()()ります。

 星空(ほしぞら)はこんなにきらきらしていてきれいだったのか、と(まど)()けて感嘆(かんたん)しました。

 (おとこ)はこれまでに()(うつく)しいものを(おも)()します。


 あさつゆのきらめき、雨上(あめあ)がりの(にじ)(くも)ひとつない青空(あおぞら)

 ちょっとした親切(しんせつ)への感謝(かんしゃ)見知(みし)らぬ(だれ)かの(おも)いやり、人々(ひとびと)笑顔(えがお)

 (たの)しいこと、(しあわ)せなこと、(かな)しいこと、(くる)しいこと。

 男自身(おとこじしん)形作(かたちづく)った現在(げんざい)過去(かこ)


 (おとこ)望遠鏡(ぼうえんきょう)をのぞきます。


 そして()えたのは、(わか)()(こい)したあの()

 (うつく)しい女性(じょせい)成長(せいちょう)したあの()笑顔(えがお)(おとこ)()けていました。


 (おとこ)望遠鏡(ぼうえんきょう)から()(はな)すと、うつむきます。

 きっと、あの()はいつまでも()げつづけるような(ひと)はきらいでしょう。


 (おとこ)()げるのをやめました。


 あたたかな日差(ひざ)しのある()(おとこ)故郷(こきょう)にいました。

 なつかしい母親(ははおや)()(いえ)(まえ)へ。

 ()(ちち)(おく)花束(はなたば)をもって。


 (いえ)(にわ)では二人(ふたり)女性(じょせい)(にわ)手入(てい)れをしていました。

 そのうちの一人(ひとり)である母親(ははおや)が、(おとこ)がいることに気付き(きづき)、かけだします。

 母親(ははおや)にだきしめられるなか、もう一人(ひとり)女性(じょせい)(かお)(おとこ)()えました。


 あの()のきらきらした笑顔(えがお)を。


これは神秘の望遠鏡と、星を見た人々のお話。


わたしにはもう望遠鏡は必要ございません。

今度はあなたの番です。


あなたの星を見つけてください。

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