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もう、今更です  作者: もちもちほっぺ


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7

結婚から数ヶ月が経ち、季節はゆっくりと巡っていた。


セリーヌ・ド・リヴィエール――いや、今はセリーヌ・ルフェーヴルと呼ぶべきだろう。


彼女の暮らしは、大きく変わったようでいて、驚くほど穏やかだった。


エドモン・ルフェーヴルと共に過ごす日々は、以前のような不安や孤独とは無縁だった。


彼はいつも落ち着いていて、必要以上に干渉することもない。


だが、それでいて大切な時には必ず傍にいてくれる。


ある朝、セリーヌはゆっくりと目を覚ました。


窓から差し込む朝陽が、柔らかに部屋を満たしている。


心地よい温もりを感じながら、隣を見ると、エドモンが先に目を覚ましていた。


「おはよう、セリーヌ」


優しく微笑む彼の声は、まだ少し眠たげだった。


「……おはようございます」


彼女もまた、小さく微笑みを返す。


結婚してから、朝の挨拶を交わすことが当たり前になった。


「昨夜はよく眠れたか?」


「ええ、とても」


セリーヌが答えると、エドモンはそっと彼女の髪を撫でた。


「ならよかった」


ほんの些細なことなのに、こうして毎朝穏やかに始まることが、どれほど幸せなことなのか――セリーヌは少しずつ実感していた。


かつての婚約時代にはなかったもの。


冷え切った関係に傷つくこともなく、無理に自分を押し殺す必要もない。


「朝食はどうする? 今日は少し遅めに食べてもいいが」


「……エドモン様が決めてくださいな」


「僕が決めるのか?」


「ええ、あなたとなら、どちらでも構いませんから」


その言葉に、エドモンの微笑みが少し深くなる。


「なら、一緒にのんびり食べようか」


昼下がり、二人は庭で過ごしていた。


テラスに用意されたティーセットの向かいに、エドモンが静かに座る。


「サロンの運営は順調か?」


彼はカップを手にしながら尋ねた。


「ええ、おかげさまで」


セリーヌは微笑みながら答える。


「ジュリアも、新しい企画を考えているようですし、これからさらに忙しくなりそうですわ」


「それはいいことだな。君がやりがいを感じているのなら、何よりだ」


彼の言葉には、いつものように温かさがあった。


エドモンは決して彼女の行動を制限しない。


貴族の女性であっても、ただ家庭に閉じ込められるのではなく、自分の意思で歩むことを尊重してくれる。


それが、彼と共にいることの心地よさだった。


「最近は、女性たちの間でも、仕事を持つことへの関心が高まっていますの」


「君のサロンが、そうした流れを作り出しているのだろう」


「……それなら、嬉しいですわ」


セリーヌが紅茶を口に運ぶと、そっとエドモンがカップを差し出した。


「君が頑張りすぎて疲れた時は、いつでもここに帰ってくればいい」


「……ええ、分かっていますわ」


この場所が、どれほど彼女にとって安らぎになっているのか。


彼の言葉は、確かにセリーヌの胸に響いた。


夜会の日。


夫婦となってから初めて、正式に公の場へと姿を見せる日だった。


セリーヌは、美しく装い、エドモンの腕を取る。


「緊張しているのか?」


「……少し」


「なら、僕がそばにいることを忘れないでくれ」


エドモンは、ゆっくりと彼女の手を握った。


「大丈夫、君は君のままでいればいい」


その言葉に、セリーヌはふっと肩の力を抜く。


彼と共にいる限り、どんな場でも自然体でいられる。


夜会の場で交わされる祝福の言葉の中で、彼女は改めて思った。


ああ、私は幸せなのだと。


時には忙しく、時には静かに。


セリーヌとエドモンの結婚生活は、派手ではなくとも、穏やかで優しさに満ちていた。


かつての孤独とは違う。


冷たい婚約関係に縛られていたあの頃とは、まるで別世界にいるようだった。


彼のそばにいると、肩の力が抜ける。


そして、互いに無理をしないまま、ただ隣にいることが心地よかった。


これこそが、自分が求めていた未来なのかもしれない。


そう思いながら、セリーヌは静かに目を閉じる。


暖かな風が、二人の間を優しく吹き抜けた。

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