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セリーヌとジュリアのサロンは、今日も優雅な賑わいを見せていた。
陽光が差し込む広々とした室内には、美しく整えられたテーブルが並び、貴族令嬢たちが集っていた。香り高い紅茶と、ふんわりと焼き上げられた菓子が運ばれ、華やかな談笑があちこちで交わされている。
「リリア・エヴァレット嬢が、隣国の研究室で活躍されているそうですわ」
ふんわりとした焼き菓子の香りが漂うサロンで、一人の令嬢が話し始めると、周囲の女性たちが興味深そうに耳を傾けた。
「まあ、本当に? 以前は学園での騒動に巻き込まれてしまったと聞いていたけれど、今はもう、しっかり自分の道を歩まれているのね」
「ええ。学園の支援もあって、隣国の研究室で働くことになったそうですわ。もともと学問に優れた方でしたし、現在は医薬の研究に携わっているとか」
「医薬の研究?」
「そう。貴族女性がそのような職に就くのは珍しいことだけれど、彼女の努力が認められて、実際に研究員としての地位を確立されているのですって」
「素晴らしいわね。彼女が学園での出来事に囚われることなく、自らの力で道を切り開かれたことが何より素敵だわ」
「ええ。女性が社会で活躍するのは難しい時代だけれど、少しずつ風向きが変わりつつあるのかもしれませんわね」
会話の流れは、自然とカトリーヌ・ベルフォールの話へと移っていく。
「そういえば、カトリーヌ様も、女性の立場を大きく変えつつあるお一人ですわよね」
「そうですわね。王家の婚約者という立場を失った後も、彼女は堂々と社交界に立ち続け、今や貴族社会で重要な役割を果たされていますもの」
「男性に頼らず、自らの知性と意志で生きていらっしゃる。まさに、私たちの憧れですわ」
「最近では、女性も知識を持ち、社会に関わるべきではないかという話が増えてきましたわよね」
「ええ、でも、実際にその道を歩める方は限られていますもの。リリア嬢やカトリーヌ様のような方々が、女性の可能性を示してくださっているのかもしれませんわね」
セリーヌは、そんな会話を静かに聞きながら、微笑を浮かべていた。
彼女たちが語る未来は、かつてなら夢物語に過ぎなかった。だが、今このサロンで語られる話題は、確実に新しい時代の兆しを示していた。
「女性が学び、社会に関わることが当たり前になる日が来るといいですわね」
そう言いながら、セリーヌはそっとカップを持ち上げた。




