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セリーヌとエドモン・ルフェーヴルの婚約が正式に発表されたのは、春の爽やかな風が貴族社会を吹き抜けるある日のことだった。伯爵家とルフェーヴル家の間での慎重な話し合いを経て、互いに満足のいく形でこの縁談が結ばれた。
婚約発表の場は、リヴィエール伯爵家の広間だった。格式高い場でありながら、温かい空気が漂い、訪れた招待客たちは二人を祝福するために集まっていた。
セリーヌはエドモンの隣に立ち、その表情は穏やかで柔らかな笑みを浮かべている。彼女の隣で、エドモンも落ち着いた態度で祝辞に応えていた。
「このたび、リヴィエール伯爵家のセリーヌ嬢と婚約を結ぶことができ、大変光栄に思っております。彼女とともに、これからの未来を築いていけることを心から楽しみにしております。」
その言葉に、セリーヌは彼を見上げて微笑んだ。彼女の顔には、以前の婚約時には見られなかった安堵と幸せが溢れている。
ジュリアが人混みをかき分けて二人の元へ駆け寄った。
「セリーヌ、本当におめでとう!お兄様のこと、どうかよろしくね!」
「ありがとう、ジュリア。本当に……あなたのおかげよ。」
セリーヌは親友の手を握りしめ、心から感謝を伝えた。
その一方で、セリーヌの婚約発表の知らせは、アラン・ド・モントレイユにも届いていた。
「……そうか、セリーヌは婚約したのか。」
彼はその知らせを聞きながら、胸の奥で複雑な感情が湧き上がるのを抑えきれなかった。セリーヌが自分の手の届かないところへ行ってしまった――それを再び思い知らされるような感覚だった。
アラン自身も、新しい婚約を考えるべき立場にあった。だが、公爵家の名にふさわしい相手との話が持ち上がるたびに、彼の心は何かに縛られているように感じた。自分が選べなかった過去の婚約者の笑顔が、頭をよぎる。
「君はもう、僕を必要としていないんだな……。」
静かにそう呟き、アランは視線を窓の外に向けた。そこには春の穏やかな光が広がっていたが、彼の心には届かない。
セリーヌとエドモンの婚約は、貴族社会でも好意的に受け止められていた。リヴィエール家とルフェーヴル家の縁組は、それぞれの家の名誉を高める形となり、何より二人の相性が良いと噂されていた。
「リヴィエール嬢もようやく幸せを掴んだわね。」
「ルフェーヴル家のエドモン様なら、彼女をしっかり支えてくれるでしょう。」
一方で、アランの婚約が未定であることは、少なからず話題になっていた。
「公爵家の方がいまだに婚約者を決めていないなんて、どうしたのかしら。」
「セリーヌ嬢との婚約解消の後、どこか迷いがあるように見えるわね。」
「王子の騒動に巻き込まれたことが影響しているのでは?」
その言葉が、アラン自身の耳に届くことはなかったが、彼の胸に残る空虚さは誰よりも彼自身が感じていた。
婚約発表を終えた後、セリーヌはエドモンとともに広間の一角で話をしていた。彼の穏やかな声が彼女の心を落ち着けてくれる。
「緊張していたのでは?」
「少しだけ。でも、あなたがそばにいてくれたから大丈夫でした。」
二人の間には、静かで安らかな空気が流れている。エドモンの優しさに触れるたび、セリーヌは自分の選択に確信を持つことができた。
「これから、二人でゆっくりと歩んでいこう。」
エドモンのその一言に、セリーヌは力強く頷いた。
セリーヌの新たな婚約――それは彼女にとって、これまでの苦難を越えた先に見つけた新たな未来の始まりだった。そしてその一方で、アランは自らの迷いと過去の選択に向き合う日々を過ごすこととなった。




