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セリーヌは、ジュリアの軽やかな手引きでエドモン・ルフェーヴルと徐々に親交を深めていった。彼はセリーヌより数歳年上で、その落ち着いた物腰や、どこか達観した雰囲気が彼女にとって新鮮だった。
ジュリアは二人を引き合わせるたびに、さりげなく場を盛り上げながらも、時折そっと距離を取って二人だけの会話を促した。
「セリーヌ、お兄様ってちょっと変わってるけど面倒見がいいのよ。だから何でも遠慮せずに話してみて。」
「ジュリア、そういうことを本人の前で言わないの。」
エドモンが苦笑しながらたしなめると、ジュリアは肩をすくめて笑った。その穏やかなやり取りを見ているだけで、セリーヌの心はどこか和らいでいくのを感じた。
エドモンは決して押し付けがましい態度を取らなかった。セリーヌが話し始めるのをじっと待ち、彼女が何を言っても、まずは丁寧に耳を傾けてくれる。
ある日のティータイムで、セリーヌがふと自分の過去の婚約に触れた。
「……私は、自分が未熟だったから上手くいかなかったんだと思っていました。でも、最近になって、それだけではなかったのかもしれないと思うんです。」
セリーヌが静かに語ると、エドモンはゆっくりとカップを置き、柔らかい声で答えた。
「セリーヌ嬢、それは君のせいじゃない。お互いが正しい道を見つけられなかっただけだ。そして、それを未熟と呼ぶ必要はないよ。むしろ、そうして考えられる君が素晴らしいと思う。」
その言葉にセリーヌは驚き、少し頬を赤らめた。エドモンの余裕ある態度と優しい言葉が、彼女の心にそっと響いていく。
セリーヌとエドモンの交流が進むにつれ、リヴィエール家の家族もまた、その様子を温かく見守っていた。伯爵夫人はある日、娘に言った。
「エドモン様のような穏やかで包容力のある方と一緒にいると、あなたも安心していられるでしょう?焦る必要はないわ。ゆっくりと、その時間を大切にしてね。」
ルシアンもまた姉の様子を見て安心したように頷いた。
「エドモン様なら、姉上のことをちゃんと見てくれると思うよ。僕も心から応援してる。」
伯爵は表向きには何も言わなかったが、夕食の席でちらりとエドモンの話題に触れるとき、その目には娘を見守る父親としての安堵が浮かんでいた。
エドモンと過ごす時間が増えるにつれ、セリーヌは少しずつ自分を取り戻していった。彼の穏やかな笑顔や落ち着いた言葉が、これまでの彼女の孤独を静かに癒してくれたのだ。
そしてセリーヌの中に、まだ小さなものではあるが、新たな未来への希望が芽生え始めていた。それは彼女自身が自らの歩む道を選び取るという、これまでになかった感覚でもあった。




