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リリア・エヴァレットが学園中の注目を浴び、王子フェリクス・ヴァルモンの婚約破棄という騒動に巻き込まれたことで、学園側は沈黙を破った。名門の名にふさわしい毅然とした態度で、状況に対処するための声明を発表した。
学園長が集会を開き、生徒たちに向けて静かに、しかし力強く語りかけた。
「本学園は、すべての生徒に公平な学びの場を提供することを使命としています。個々の生徒が家庭の事情や外部の圧力に飲み込まれることがあってはなりません。リリア・エヴァレット嬢に対する不当な注目や誹謗中傷を断じて許しません。」
学園長の言葉は静かに広まり、貴族や王族を問わず通うこの学園の力を示すものだった。
「学園が彼女を守る姿勢を見せるなんて、さすがだわ。」
ジュリアが感心したように言った。セリーヌもそれに同意しながら、小さく頷いた。
「リリアさんにとっては、これ以上ない救いかもしれないわ。学園が彼女の立場に理解を示してくれるなら、周囲の態度も変わるはず。」
実際、学園のこの対応は、多くの生徒たちに影響を与えていた。それまでリリアを軽蔑するような噂話をしていた者たちも、次第に口を閉ざすようになった。
しかし、この学園の介入は、王子と王家にさらなる打撃を与える結果となった。学園がリリアの立場を公然と弁護したことで、王子の行動がどれだけ無責任で、周囲を混乱させたかが明らかになったのだ。
「学園がリリア嬢を擁護したということは、王子が間違っていたと認めるようなものではないか?」
「王子が自分勝手な行動を取ったことで、学園全体に迷惑をかけた。これでは王族の威厳が揺らぐ。」
社交界でも、この学園の対応は話題となり、次第に王家への批判が強まっていった。
「王妃がどれだけ庇おうとしても、学園が王子の行動を非難したのなら、もう隠しきれないわね。」
「このままだと、王子が次期国王になるのに反対する声が出るかもしれない。」
宮廷内部でも、王子の行動に対する反発が広がり、王妃は必死に鎮静化を図るものの、効果は薄かった。
リヴィエール伯爵家でも、学園の対応と王家の動揺について話し合われていた。夕食後、書斎に集まった家族は、それぞれの意見を述べ合っていた。
「学園がリリア嬢を擁護する声明を出したのは見事だった。だが、その分、王家の立場が弱まるのは避けられないな。」
伯爵が厳しい声で言うと、伯爵夫人が静かに続けた。
「王家の影響力が揺らぐことは、この国にとっても大きな問題ですわ。ただ、あのリリア嬢を守る学園の姿勢には敬意を感じます。」
「リリア嬢の心が壊れる前に、王族の権力に影響されにくい学園が動いてくれて本当によかった。」
セリーヌはその会話を静かに聞きながら、窓の外を見つめた。
「……学園がリリアさんを守ったのは正しいことだわ。彼女が王子に振り回される必要なんて、最初からなかったんだから。」
家族は彼女の言葉に耳を傾け、やがて伯爵が静かに頷いた。
「そうだな。これからの世代が、こうした問題をどう乗り越えていくかは非常に重要だ。」
セリーヌは心の中で、リリアの勇気と学園の対応を改めて讃えていた。自分自身もまた、家族の助けを得て新たな未来を歩み始めた今、リリアがこれからどんな道を選ぶのか、静かに見守りたいと思っていた。




