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午後の講義が終わり、セリーヌとジュリアは学園の中庭を見渡せる窓辺に並んで腰掛けていた。木々の隙間から見える庭では、リリアを囲む王子とアラン、そして彼らの側近たちが談笑している。学園中の注目を集める光景だが、セリーヌは無表情のままそれを眺めていた。
「……全然気にならないのね?」
ジュリアが驚いたように声を上げると、セリーヌは微かに笑った。
「気にする気力も残っていないのかもしれないわ。アラン様が誰と一緒にいようと、今の私にはもう関係ないもの。」
その冷ややかな言葉に、ジュリアは片眉を上げながらセリーヌを見つめた。
「え、それって結構大ごとじゃない?あんなに頑張ってたセリーヌが、アラン様に無関心になるなんて。何かあったの?」
セリーヌは軽く息をつき、窓から目を離してジュリアの方を向いた。
「実はね……家族が動き始めたの。父様がアラン様に正式な場で話をするつもりらしいわ。」
ジュリアの目が輝いた。
「そうなの?それって婚約の見直しとか?」
「……まだ決まったわけじゃないけれど、可能性はあると思う。」
セリーヌの声にはどこか達観した響きがあった。それを聞いたジュリアは口元に悪戯っぽい笑みを浮かべ、軽く彼女の肩を叩いた。
「もしセリーヌがフリーになったらさ、どう?私のお兄様なんて。エドモンなら絶対君を大事にしてくれるわよ!」
「えっ?」
思わぬ提案に、セリーヌは驚きの声を上げた。ジュリアは悪びれることなく続ける。
「だって、お兄様なら安心でしょ?穏やかで優しいし、貴族としての責任感もある。しかも、ほら、見た目も悪くないじゃない。」
セリーヌは呆れたようにため息をつきながら、苦笑いを浮かべた。
「ジュリア……それ、本気で言っているの?」
「半分本気、半分冗談。だって、セリーヌが幸せになるのが一番なんだから!」
ジュリアは軽やかに笑いながら言った。その明るさに、セリーヌもつられて小さく微笑む。
「ありがとう。でも、まだ何も決まっていないのよ。」
「それはそうだけど……もしそうなったら、私が全力でお兄様を推薦するわ!セリーヌには、ちゃんと大切にしてくれる人が必要なんだから。」
ジュリアの真っ直ぐな言葉に、セリーヌは少しだけ胸が温かくなるのを感じた。窓の外の逆ハーレムじみた光景も、今はもうどうでもいいものに思えた。
「本当に、ジュリアには助けられてばかりね。」
「当然でしょ。親友なんだから。」
そう言って微笑むジュリアの言葉に、セリーヌも静かに笑顔を返した。その笑顔は、少しだけ前を向く力を取り戻した証だった。




