とあるヒロインの恋煩い
「好きです!結婚してください!!」
「えっ、無理です」
「ガーン!」
一世一代の大!告!白!ここに敗れたり!!
とまぁ、そんな冗談はさておき。
なぜ私が告白するに至ったのか聞いてもらいましょう!!
あれは4ヶ月程前、新入社員な私は心野宮スバル先輩にあれこれ教えてもらったのです!
先輩はとっても可愛いくて、おどおどしながらも教えようと必死になるのが兎に角可愛いいんですよ!!
「こ、こここはここうにゅ、にゅりゃn*▲~~!?!?」
言い直そうとして舌噛んじゃったり、
「よ、よければこ、これ、た、食べ……ない?」
疲れた私を気遣ってお菓子の差し入れもくれたりと優しい一面もあるのです!!
そんな先輩が可愛くて好きで堪らない私ですが、あるとき不穏な噂を聞いたのですよ。
どうやら先輩、悪質な女に貢がされているみたいなんです。
確かに、先輩は騙しやすく利用しやすいと思いますよ?
だからと言ってそんな事して良いわけじゃない!!
よしんば、しても良いのは私だけ!!
私なら貢がせる事も無く甘やかして上げるんだから!!
他の女になんかやらない!!
怒り心頭の私は先輩を尾行する事に決めました!!
悪質な女に裁きを下し、先輩の目を覚まさせて上げるのです!!
なにより、あんなにも純粋で可愛い先輩が泣く姿なんて見たくありません!!
と、実行に移したのは良いものの、それらしい気配は全くありませんね?
休日に会ってるのかと思い、1日ずっと尾行したりもしたけど一人もそれらしい人が出てきません。
おかしいな?とは途中で気が付きました。
そもそも、誰情報かも知りません。
もしや、これ、噂に踊らされました?
なんてこったい、これはしてやられました。
貴重な休日を無駄な事に……使ってはいませんね?
逆に先輩のプライベートな姿を見れてとっっっっても満足してます!
これは新たな趣味の発見!!
なんて思っていたら、
「君、件のストーカーだね?」
ストーカー?なんの話です?
「……自覚が無いのか?」
自覚?私はただ先輩を観察してるだけですけど?
「はぁ……一度、署に来てもらえるかな?」
はぁ、それは大丈夫ですけど……
何がなんだか分からないまま署に連れて行かれた私は衝撃の真実を知らされました!!
な、ん、と!
私!ストーカーだそうです!!
そんなバカな!?と思いましたが、よくよく思い返せば私の行動はストーカーそのもの。
それを知った時の私のショックは筆舌し難いものでした。
世界が滅び、後に残るは先輩と私だけ。
終末世界で私と先輩は―――キャ!
なんて妄想を捗らせている内に気が付けば家に居ました。
警察署で何か言われたような気がしますが、覚えていないと言う事は重要では無いのでしょう!
明日もまた先輩と出会える事にトキメキつつ、翌日を迎えると―――
――――先輩に避けられてしまいました!!!
世界の終わりだ!!
人生終了!!
夢は儚く砕け散ったのです!!!
避けられたぐらいでめげる私では無い!!
なんで!?どうして!?私を捨てないで!!
と捲し立てるように問い詰めると、先輩は慌てた様子で、
「わ、分かったから!!おおお落ち着いて!!お願いがいだから!!」
と逆に懇願されました。
必死な先輩も可愛いなと思いつつ、安心させるように抱き締めたのです。
分かりました。落ち着きます。でも、今度からは避けないで下さいね?
私の本心からの言葉に、先輩は顔を真っ赤にしながら頷きます。
先輩の小太り気味な体型は抱き心地が良く、この感触をずっと味わっていたと思わせます。
ずっと、ずっと――
「そ、そそそろそろははは離れてく、くれ、ない、かな?」
懇願されては仕方がありません。
とても残念ではありますが、離れます。
離れると先輩はホッとした表情を浮かべます。
その表情もとても可愛らしくて良き!
仕事が捗ります!!
その表情を思い浮かべるだけでご飯何杯だって行けますよ!!
やる気全開!!フルスロットル!!
私を止める者は誰も居ません!!
おりゃりゃりゃりゃ~~~~~~~~~!!!
その1日で大量の仕事を達成した私は社内で【純愛ストーカー】と呼ばれるようになりました。
なんで?!
あれから数日は先輩との間に壁を感じてましたが、数日も経てば無くなり、いつものように接してくれるようになりました。
もしかしたら前よりも距離が短くなったかも?!
先輩と過ごす日々はとても楽しく、幸せでした。
分からない事は聞いて、より親しくなるために会話を重ねる。
それだけで十分な筈でした……
人とはそれだけでは満足しない生き物です。
欲が満たされれば次の欲望を満たしたくなるもの。
日が経つにつれ、私の中で結婚願望が強くなります。
先輩と結婚したい。
先輩と一緒のベットで寝たい。
先輩との子供が欲しい。
先輩の私生活を把握したい。
先輩を閉じ込めてしまいたい。
そんな想いが日々高まって行くのです。
我慢しようにも我慢が効かず、ついに爆発して起こったのが冒頭の出来事だったと言う訳です!
こんなに先輩を愛してるのにこんな仕打ちは酷いと思いません?
もしや、私の想いが足りない?
この想いを伝えるにはどうしたら良いのか考えます。
考えます。
考えます。
考えます。
ふと、ある案が思い浮かびます。
それは―――
―――先輩を監禁しちゃえば良いんだ。