第3話 レベルを上げよう②
ということでネズミを退治していくぞ!
マイホームにとってネズミやシロアリ、そしてGは天敵だからな。すべからく駆逐してやる。
今の俺に出来ることは増築と改築のスキルを使い、石材を創って操作すること。
であればネズミを倒す方法は自ずと限られてくる。
シューティングゲームよろしく石材をぶつけて仕留めることだ。
三日目の分を含めて生成できた石材は30個。こいつがそのまま弾数となる。
俺は視界スキルを使ってダンジョン内を巡り、ネズミことラットンを捕捉した。
部屋や通路など至る所にネズミの通り穴があるようで、奴等を容易に見つけることができた。
実体が無い俺は奴等に気配を悟られることもないので警戒もされていない。
(いつでも狙い撃てるように、奴等が行き来するルート付近に石材を配置しておこう)
そうしてコツコツと準備を進め、石材の移動で少しだけ騒がしくなったダンジョン内が静まり切るのを待った。
数時間後、再びラットンたちが姿を見せ始める。
基本的に通路や部屋の隅っこをすばしっこく移動しており、あまり中央側には寄ってこない。
俺は視界を床スレスレまで落とし、目標と操作する石材の高さを合わせた。
(シューティングはシューティングでもFPSに近い感覚だな……)
何度か往復を繰り返す1匹のラットンに照準を合わせ、俺は石材に念を込める。
昨日の内に試してみたが、改築スキルは使用限度数がかなり多いらしく、半日以上操作をしていても問題なく動かせた。もしかしたら増築スキルと違って無制限なのかもしれない。
なので操作の加減も練習できた。
脳内で……まぁ脳もないんだけど、石材を動かすスピードをイメージすれば、それに応じて速度を調節できる。
感覚的にはションベンする時に勢いよく出すか、ちょっとずつ出すかみたいな感覚だ。
しかし、生き物を殺すっていうのはやはり緊張する。
俺が生きていた現代社会じゃそれこそ狩りなんてゲーム内でしか経験がない。
(きっと血とか出るんだろうな……ええい! 覚悟を決めろ俺!)
俺は心の中で呼吸を整え、再びラットンを視界正面に捉え直す。
そして動きを止めた目標に向かって石材を高速で発射させた。
(南無三ッ!)
風を切りながら直進する石材の弾丸がラットンを急襲する。
高低差と方向は完璧だった。
しかし――、石材が当たる直前、ラットンは野生の本能と呼ぶべき危機回避能力でこれを躱す。そして一目散に小穴へと逃げ込んでしまった。
(ぐっ、チクショウ……ネズミの分際で)
それから時間を置きながら10回ほど同じことを試し続けた。
結果は全敗――。
原因は単純に石材操作の速度不足で、発射して到達するまでに察知され逃げられる。
速度にも限界があり、本物のライフルの様な速度は出せない。
まぁ、そもそもこれって改築スキルだしな。
(また考え直しか)
こうして俺の第一次ネズミ討伐ミッションは失敗に終わった。
正直なところ悔しすぎて夜しか眠れなかった。
というか俺ってステータス上はスタミナ無限なので寝る必要はないんだけどね。
なので寝る間も惜しんでというわけではないが、もっと真剣に考えた末に意外とはやく良策が思いついた。
俺は元人間だ。その知識をもっと活かそうじゃないか。
(ふふふ、待ってろよクソネズミ。次こそ駆逐してやる)
などとネズミ相手に必死こいてる元人間の現ダンジョンなのであった。
まったくもって先が思いやられる。