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第30話 聖楔の魔人戦⑥

 四体目の魔人・バランシュナイヴが花々から毒の煙霧を放出する。そして同時に多数の触手が蠢き臨戦態勢へと入った。

 対するアスラも両掌を合わせ闘気を高め始める。

 俺は両者のその迫力を目の当たりにし、自身に任された役目の重さを痛感していた。


 バランシュナイヴ戦が始まる数分前――


「サジン、奴の急所を見つけてくれ」


(どういうこと?)


「身体に咲いている花の中の一つに〝目玉〟があるはず。それが弱点ではあるのだが、戦闘時にその箇所が毎回異なるのだ」


(わかった。〈視界〉スキルでその弱点を探し出してアスラに教えればいいんだな)


「なるべく急いでくれ。視覚を欠いた状態で奴の攻撃を捌き続けるのにも限界がある」



 アスラは稼げる時間はせいぜい五分程度だと言っていた。

 それが毒を吸わず息を止め、バランシュナイヴの攻撃を避け続けられる限界時間。

 武を極めた竜人のアスラであれば、単純に息を止めていられる時間は本来もっと長い。しかし視覚を欠いた状況でとなれば神経の擦り減り方は何倍もの重荷となる。



「死を賜う」


 バランシュナイヴから高速で伸びてくる根の触手。その先端は茨のようなトゲが密集している。


 ――皇式こうしき・流鱗の型〝おろし〟!


 触手が迫りくる直前、アスラは右足を石床に踏み込む。それは中国武術でいうところの震脚に似た動作だった。その衝撃で地面から尋常でない旋風が巻き上がる。

 その風に遮られ、バランシュナイヴの触手はアスラを捉えることができず逸れていった。


(すっげぇ……)


『サジン、急げよ』


(あ、そうだった)


 アスラからの心話で我に返った俺は〈視界〉スキルを展開する。

 俺はスキルのレベルが上がったことで、複数同時に視界を自身で共有することができる。

 つまり以前は1台しかなかった監視カメラが増えたようなものだ。今では6台の視界カメラでダンジョン内を見渡すことができる。これ地味に超便利。

 一応保険の為にアムのいるダンジョン・コアに一つを割いているが、バランシュナイヴの弱点を早く見つけないとならないので残りの五つ全てを使う。


 しかし、あらゆる角度から確認したが何せ花の数が多すぎる。

 大小様々な花があり、さらに毒気を振り撒いている所為で視界を遮られ見えづらい。

 オマケに時間制限付きということもあり、俺は焦燥に駆られていた。

 その間もアスラはバランシュナイヴの攻撃を躱し続けている。その巨躯に見合わない流麗な動きはまさしく武闘家のそれだった。


 ――皇式・流鱗の型〝あからしま〟!


 逆袈裟に振り上げた竜爪から風の刃が発生し、無数の触手を両断していく。

 刃はそのまま天井に巨大な傷痕を残したが、例によって聖楔の自動修復が発動しすぐ元に戻った。

 やっぱり魔人を倒さないと脱出はできないようだ。


(――ッ!? アスラ後ろだ!)


 アスラの技の隙をつく形で、後方の地面から生えてきた別の触手が襲い掛かる。

 


『ぬぅん!』


 触手が身体を貫こうとした直前、アスラは竜尾でそれを掴んで止めていた。目を閉じた状態で、あんな白刃取りのような神業するとかヤバすぎんだろ。


「……死を賜う!」


『ッ!!』


 アスラが寸でのところで止めた触手の先端が開き、そこから魔法による閃光が放たれた。

 レーザービームの如き赤黒い魔力の光がアスラの肩を貫く。


(アスラ!)


『ちぃ! 油断したか……』


(大丈夫か!?)


『問題ない。聖楔の影響で魔法のレベルは下がっている。でなければ腕を持っていかれていた』


 アスラは肩口から血を流しながらも触手を爪で切り裂く。

 しかし触手はすぐさま再生をし、アスラの周囲を取り囲んでいた。


 魔法の威力が低いのならアスラは易々と致命傷を受けたりしないはずだ。俺は早くバランシュナイヴの目玉を見つけないと。


(だぁー! 数が多いし視界も悪い! 何か良い方法はないのか……)


 敵の急所、弱点である花の目玉――。

 悩んだ時、困った時は爺ちゃんを思い出せ。いつも通り何か役立つ思い出があるはず。

 とか考えて記憶を辿ったけど特に状況を打破できるメモリアルエピソードはなかった。


(くっそ! どないせえっちゅうねん!)

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