第2話 レベルを上げよう①
俺はレベルを上げる手段を考えていた。
RPG的に考えればエネミー、つまりモンスター等を倒して経験値を稼ぐことでレベルがアップする。
他にもスキルを使い続ければ熟練度が上がって使用回数も増えたりする。
しかしあれから二日掛けて使ったが特にそんな様子もなく、増築スキルに関しては1日10回。
あ、ちなみに改築スキルの効果は石材を移動、操作できる能力でした。
つまり増築スキルで石材を創り出し、改築スキルでそれを操作して組み立てる。
この二種類のスキルを駆使してダンジョンを広げていくことになるわけだが、今のところ使い勝手が悪すぎて話にならない。
生産スキルと吸排スキルにいたっては唱えても何も起こらねえし……相変わらずのThe☆不親切。
(そもそもこのダンジョンの外ってどうなってるんだ?)
このダンンジョンには外への出入り口が無い。
完全な閉鎖空間になっている。なので冒険者や探索者が侵入してくることもない。
それはそれで平和で良いのだが、尚更八方塞がり感が否めない。
何となくの予想だが、もし地下にこのダンジョンがあるのなら、増改築で広げていった末に地上へと繋がる出入り口を作れるのではないだろうか?
であれば――、第一の優先目標としては地上を目指しダンジョンを拡大することだ。
誰もいないダンジョンなんて何の価値もないからな。
なのでレベル上げをしなければ始まらない。
そしてその手段を考えていた時のことだった。
(あっ……)
ぼーっとしながら視界スキルで部屋を眺めていたら、ふと部屋の隅っこで何か小さいものが動いていた。
(ネズミ?)
ネズミだ。ちょっと毛が紫色で見た目は毒々しいけど明らかにネズミだった。
そのネズミを視界正面に捉えると、小さなウィンドウに『ラットン』と表示された。
多分これがモンスターの種族名なのだろう。
どこから迷い込んだのか知らないが、コイツを倒せば経験値が入るかもしれない。
(でもどうやって……武器がないし魔法も習得してない。武器を持つ手がそもそも無いんだけど)
色々と思案を巡らせていた時、祖父の顔が思い浮かんだ。
俺は両親を幼い頃に亡くし、祖父が男手一つで育ててくれた。
祖父は寺社仏閣を建築・補修する宮大工の棟梁で、寡黙でいぶし銀を絵に描いたような漢だった。
『いいかサジン、何事にも近道はねえ。コツコツと地道に組み立てた先にしか〝本物〟はねえのよ』
祖父はそう言いながら、自分で造り上げた仏閣を誇らしげに見上げていた。
俺はそんな彼の背中に憧れ、いつしか何かを作るということに熱中していったのだ。
(地道に……か。よし、俺にいま出来ることやるしかないよな)