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第27話 恙ないダンジョンライフ②

 アスラが三つ目の聖楔を破壊して戻ってきた。


「サジン、待たせたな」


(お疲れ様)


 アスラの後ろにいたのは、シスに続いてまたも女の子だった。


 しかも今度はアムより幼い見た目の娘だ。

 恥ずかしがり屋のようで、アスラの太い足にしがみつきながら身を隠している。


「あ……あの、初めまして。ダ、ダンジョンのお兄ちゃん……ボク、ファラだよ」


 随分と礼儀正しい子だな。


幽幻なる賢聖者(ファントム・マギア):ファラリアス・ナ=ラフィリアス】


 肩ほどまで伸びた紫色のおかっぱ頭をフードの付いた真っ白なローブで覆っている。伏し目がちで常に挙動不審な感じだ。

 手に持っている杖や異名から察するに魔法使い、いや賢者や僧侶的な職業だろう。まぁこのくらいの歳の子は初対面の相手だと人見知りするよな。


(はじめまして。俺はサジン、これからよろしくな。それにしても女子率増えてきたなぁ)


「ボ、ボク……お、男だよ」


(え? マ?)


 いわゆる男の娘ってやつか。しかし仕草や顔立ちはどっから見ても女の子なんだけどな。

 そしてアスラの影に隠れて見えづらかったが、俺はあることに気がついた。


(足が……ない? 透けてる?)


「ファラはゴースト族なのだ。故に身体は霊体で構成されている」


(竜、鬼ときて今度は幽霊か。バリエーション豊富だね。最後の四人目はどんな魔人?)


「そのことだが、少し厄介な相手なのでサジンにも手伝って欲しいと考えている」


 アスラは頭をポリポリと掻き、少しだけ面倒臭そうな表情を浮かべる。

 バトルマニアの竜皇様にしては意外な物言いだった。


(そんなに強いの?)


「総合的な実力だけで言えば五分だ。しかし相手のスキルが聖楔によるステータス低下の影響を受けづらいものでな。正直なところ我と相性があまり良くない」


(手伝うのは構わないけど、俺よりシスとかの方が良いんじゃない? 暇そうだし)


「シスは我よりも更に相性が悪い。案ずるな、御主は義体を使わずに我の眼になってくれれば良い」


(眼ぇ? うーん、何かよく分からんけど別にいいよ)


 ということで四人目の魔人はアスラに協力して挑むことになった。

 とはいえ最後の聖楔エリアまでの開通はもう少し時間がかかる。

 それまではダンジョンの拡大に専念しよう。


 ちなみにファラからはスピリアスという幽霊系のモンスターを貸してもらえることになった。彼等は火、氷、雷、風と4属性に分かれていて、それに近しいフィールド効果を付与した部屋や階層に配置したので役に立ってくれることだろう。

 見た目はなんかフヨフヨ飛んでるクラゲみたいなモンスターだった。


「サ、サジンお兄ちゃん、ボ、ボクも頑張るから手伝えることあったら言ってね」


(サンキュ、何かあったらお願いするわ)


 可愛い。もう女の子でいいでしょ。




『サジーン! 私の引っ越しまだぁ?』


 俺がファラの笑顔に癒されていると、アムの声が頭の中に響いてきた。


(お、そうだった)


 ダンジョン・コアであるアムは俺の生命線。

 掘削し拡大が進んだ現在では、ダンジョンの中層付近にコアの広間がある。

 流石に弱点がこんな中途半端な場所にあるのは不味いってことで、最深部まで移動させようっていう話をアムと相談して決めたのだ。


(それにしても少し賑やかになってきたな)


 ダンジョン内にモンスターが増えてきたこともあり、あっちこっちで小さな問題が生じてきてもいる。


 例えばガイアリザードマン達の食料問題。

 アスラの計らいで鉱石を主食にする種族なのは良かったのだが、彼等にも個性があるようでダンジョン内にある特定の石壁を食べる者がいたりする。

 俺は彼等を『グルメ君』と勝手に呼んでいた。

 しかしその所為で、ダンジョンの景観が崩れていくのが棟梁の俺としては何とも歯痒い。

 あとこれはシャドウダンサーにも言えるが、糞尿の始末も問題の一つとして挙げられる。

 この問題が発覚してから仮設トイレは作ったのだが、ルールを守ってくれているのは半数程度。

 ペットでもトイレ覚えない子いるもんな。これも個体差か。


 そもそもダンジョンなんてカビ臭いところかもしれないけど、人間だった頃の感覚で不衛生過ぎるのはちょっと遠慮願いたいわけで――。


 アスラには聖楔の件で負担かけてるし、シスは全然手伝わずに寝てばっかで役に立たない。

 ファラみたいな幼い子に力仕事やトイレ掃除させるのも気が引ける。


『サジン、ひょっとして何か困ってる?』


(うーん、単純に人手が足りないんだ。せめて俺が三人ぐらいいればなぁ)


『じゃあ増えればいいじゃん☆』


(はぁ? 俺はワカメじゃねえんだぞ。そんな簡単に……あっ!)


 増やせる。そうだ、俺は増えることができる。


(〈義体〉スキルを使うんだな!?)


『うんうん♪』


 つまり俺の〈義体〉を〈複製〉で増やし、〈自動制御〉で決められた行動をプログラムする。

 そうすればモンスター達への給食やダンジョン内の清掃を自律的(オート)でさせることも可能だ。

 しかもこれを応用すれば、ダンジョンを彩る調度品や装飾品とかを作る義体もできる。

 モンスター達だと細かな加工は難しいだろうし、教えて覚えるのにも時間が掛かる。

 手先が器用なドワーフみたいな種族がいれば楽だったけど、今のところ戦闘に特化したモンスターしかいないからな。


(ちなみに俺が増えても縛りに影響とかないよな?)


『あのゲッシュは戦闘をするに当たっての縛りだからダイジョーブイ☆』


(オッケー、これで諸々の問題が解決できそうだ)


 そんなこんなでダンジョンの拡大と設備の充実はさらに進んでいくのだった。

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