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第24話 サイカイ

「はぁ……」 


 俺はダンジョン・コアの広間にアスラと戻っている道すがらげんなりしていた。


 というのも、聖楔の広間から出る時にアスラが壁を爆破能力で破壊してくれたんだけど、その威力が目ん玉が飛び出るほどヤバかったのである。

 軽く小突いただけなのに、俺と戦った時の何倍もの威力を伴って壁に大穴が空いたのだ。

 聖楔によるステータス低下が無かったら、本当に初撃で消し炭になっていただろう。ヤバすぎて竜皇様マジ竜皇様。


「サジン、どうした?」


「いや何でもない。ちょっと心臓がキュってなっただけ」


「であるか」


 でもそのおかげでレベルがクソほど上がっている。


【名前】アヅマ・サジン

【称号】駆け出しダンジョン

【レベル】55

 HP:7500/7500(1050/12000)※義体時

 MP:2000/2000

 ST:∞(2300/2300)※義体時

 POWER:0/0(870/870)※義体時

 SPEED:0/0(1800/1800)※義体時

 LUCK:50

 取得SP:27440


 レベル55でまだ駆け出しかよ。そもそもこの称号って意味あるのか?

 まぁいいや。SPもたんまり手に入ったし、これでまた色んなスキルを取得できるな。

 ただまぁ義体は……うん、やっぱ()()しよう。




 ほどなくしてダンジョン・コア広間に辿り着いた。


「こらーサジン! 何で心話切断しちゃうのさ!」


 戻るなりアムは頬を膨らませながら不満気に怒っていた。

 アスラとの戦闘に集中していたあまり、最後の方で視界共有と一緒に途切れてたみたいだ。


「あ、すまん。繋ぎ直すの忘れてたわ」


「ひどいゾ☆」


 アムは舌を出しきゃるんとおどけてみせる。

 つい数十分前までの緊張感がログアウトしたようです。

 とはいえ今回はアムの応援?のおかげで色々と救われたし気づかされもした。


「アスラ、紹介するよ。俺の仲間のアムだ。素性はぶっちゃけ全然知らんけど多分悪い奴じゃない」


 俺の背後からのそりと姿を現したアスラは、クリスタルの中にいるアムを見やる。そして目を細め、品定めをするように観察していた。


「……っ! は――……」


「――――」


 何かを言いかけた直後、アスラの尾がビシりと勃ちあがった。


「ん? どうした? そっか、アムとは顔見知りなんだっけか」


「いや、知らぬ」


 何だろう。妙な違和感があったな。


「アムはアスラのこと知ってた風だったよな?」


「いや私もほとんど知らないよ☆ でも竜の王様って有名だから話には聞いたことがあっただけ♪」


「ふぅん」


 その割には戦ってる時はやたら親身な言い方してたように聞こえたけど。


「それでサジンよ。我は何をすれば良いのだ?」


「そうだった! 実は俺の本体ってこのダンジョンなんだけど――」


 それから俺はアスラに事の経緯と考えているプランを説明した。


 まずはダンジョンの拡大と、トラップや隠し部屋、財宝等といった設備の充実。

 やがては冒険者たちが探索に来れるよう地上への出入口を開通。

 そしてモンスターをたくさん集めてダンジョン内に配置したい旨を語り聞かせた。


「ってわけで、モンスターが欲しいんだ」


「ふむ、その程度なら容易い。であれば我の眷属を貸し与えよう。その代わりといっては何だが、強い冒険者が来たら我に闘わせろ」


「別にいいけど、アスラの相手ができるようなレベルってかなり稀有だと思うけど」


「構わん。適当な深い階層で気長に待つことにする。しかし御主は異世界から転生した元人間なのであろう?」


「うん」


「竜人の我が気にかけるのもおかしな話だが、元同族の人間たちをその手にかけることになっても良いのか?」


 俺に人間を殺す覚悟があるのかってことだ。

 アスラの言いたい事は理解できる。

 しかし俺はダンジョンという種族に転生したからか、それとも元々そういう本質なのか分からないが、人間が死ぬという事に対して思いの外希薄な心持ちになっていた。


 爺ちゃんが死んだ時はめちゃめちゃ凹んだんだけどな。


「うーん、冒険者や探窟家ってそれなりの覚悟を持ってダンジョンに潜ってくるんだろ。だったらそれに対してガチで応えるのがダンジョン()の役割だと思う」


「ひゅー☆ サジンかっこいい♪」


「茶化すんじゃありません」


「ふっ、その言葉忘れるでないぞ。我は向かって来る者に一切手加減せぬからな」


「そっちこそ簡単に負けないでくれよ」


「ガッハハハハ! 言ってくれるではないか! そうと決まれば早速はじめるか」


 言って、アスラは上に向かって首を伸ばした。

 そして大きく息を吸い込むと胸板が風船のように膨れ上がる。


 も、もしかしてこれは――。



「ウボオオオオエエェァァッ!!」



 口腔から唾液と共に2つの巨大なタマゴをアスラは吐き出す。

 そしてタマゴはすぐにひび割れ、中から二足歩行の人型トカゲが姿を現した。


「ダイレクトに産むんだ! 召喚魔法とかじゃなくて!?」


「ガイアリザードマンだ。主食は鉱物で成長するとガイアドラゴニュートに進化する。つがいだから適当な部屋に放り込んでおけば増えるだろう」


 主食が鉱物って、ここにまともな食料が無いってことも考えてくれたのか。

 竜皇様マジ竜皇様。でもすげえ放任主義なのね。


 その後、俺は二匹のリザードマンに小部屋を与え、彼等はそこで暮らすようになった。

 アスラの話では一ヶ月もすれば20~30匹ぐらいには増えるらしい。繁殖力やべえなオイ。

 手狭になる前にダンジョンの拡大も早急に進めていこう。


 ――っと、その前に言っておかないと。



「あーえっと……アムとアスラに言っておくけど、基本的に俺はもう義体使って戦ったりしないから」


「へ?」


「ほぉ……何故だ?」


「アスラと戦ってみて、俺はやっぱりダンジョンとしてあるべきだって分かったんだ。爺ちゃんみたいに棟梁としてこのダンジョンを最高の迷宮に仕上げたい。それが俺の今の目標だ」


 大工の棟梁ってのは建物全体を管理統括しなくちゃならない。

 役割分担をしっかりしてこそ良いモノづくりが出来るってもんだ。これも爺ちゃんの受け売りだけどな。


「そっかぁ」


「御主がそう決めたのであれば、異論を挟む余地は我にはない。元より御主が表立って戦うことはダンジョン存続の危機に繋がるからな。露払いは任せてもらおう」


 アスラは固く拳を握りしめ不敵な笑みを浮かべる。

 ほんと、この竜皇様いれば大体なんとかなりそうだな。


「まぁあくまで基本的にはって話さ。有事の際はコアを護らなきゃならんし」


「ちゃんと私の事も考えてくれてるんだね☆ そういうところ好きだゾ♪」


 はいはい。引きニートを養う親の気分てきっとこんな感じなんだろうな。





「よっし! そんじゃダンジョン作り再開といきますかぁ!」


「いぇーい☆」

モチベーション維持のためブクマ、評価等々おなしゃす

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