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第23話 竜皇問答

 先ほどまでの死闘など無かったことのように、聖楔の広間は静まり返っていた。


「はぁ……はぁ、勝った……」


 我ながら泥臭い勝ち方だった。

 これで聖楔の呪縛からアスラは解放されるだろう。


 しかし問題はまだ残っている。

 解放したとてアスラが俺に協力してくれるなんて保証はない。

 アムはああ言ってたが、果たして面識もないどこの馬の骨とも知らん俺を認めてくれるだろうか。


 俺はアスラが目覚めるのを待っている間、万が一のことを考えて聖楔の残骸を拾い生成素材のストックに入れておいた。

 聖楔を復元できるか分からないが、いずれ何かの役に立つかもしれないと思ったからだ。

 どうせ役に立たないと思っていても、RPGで序盤の宝箱とかドロップアイテムを拾ってしまう習性みたいなもんだ。

 まぁ最初の町や村で買った装備が、次のダンジョンで手に入って『なんぜやねん!』と後悔するケースの逆みたいなものだな。


 そんな事を考えていると、倒れていたアスラの指がピクりと動いた。


「…………(ごくり)」


 めちゃめちゃ緊張する。いきなり喰われそうになったらどうしよう。

 もしもの時は〈義体〉スキルを解除して一時撤退だ。


 アスラがゆっくりと立ち上がり、俺を視界に捉えた後に周囲の状況を確認するよう頭を巡らす。

 そして少しの間なにかを考えるように瞑目していた。

 良かった。いきなり襲い掛かってくるような真似はしないようだ。


わっぱ、名は何と申す?」


「サジン……アヅマ・サジン」


「そうか。薄っすらとだが憶えている。貴様と我は戦った……そして負けたのだな」


「アンタが全力を出せてたら勝てなかったよ」


 今のアスラはさっきまで戦っていた強さとは比べ物にならない。

 すぐにでもこの場から逃げ出したいほどの闘気が全身に漲っている。これが竜皇の本来の迫力。

 冷静に考えるとラットンの後に戦っていいレベルの相手じゃねえよコイツ。

 普通のRPGならラスボスだって言われても納得しちまうわ。


「あの一撃、あれはどういうカラクリだ?」


「頭突きのこと?」


「うむ。最後に放ったが故にそこは鮮明に憶えている。我と同じ切り札だったというのにも驚いたが、しかし問題はその硬さだ。とても普通の人間とは思えぬ」


 まぁ元人間のダンジョンなんだけどね。

 とりあえず隠して心証が悪くなるのも嫌だし素直に答えておくか。


「〈義体〉を改造したんだよ。頭部だけね」


 そう、俺が使える〈複合化〉は〈義体〉にも組み合わせ強化することができる。

 今現在〈生成〉で造り出せる硬度の高い4つの鉱石素材、それら全てを合成加工させた物質で頭部のみを再構成したんだ。


 いわゆる超硬合金というやつで、工具なんかにも使われたりしている。

 そこに〈複合化〉スキルの強化バフも合わさったことで頭突きの威力は飛躍的に上がった。

 素材の合成加工に関しては、ラットン用のトラップを作る際に何度か検証していたから難しいことではなかった。


「ほう……なぜ頭部だけだったんだ?」


「全身を超硬合金化させると動きが鈍くなるから。腕や足でも別に駄目じゃないけど、懐に飛び込んだ時に最速最短のタメで繰り出せるのは頭突きだった。あ、これは今までの喧嘩で一番成功率が高かったってだけね。特に根拠はなし」


 自分よりも身体のデカい相手と喧嘩してばかりだった時の経験が、まさか異世界で活きるとは俺も思わなかった。


「なるほど。しかして武の真理には迫っていると言える。大したものだ」


「いやテキトーだよ。マジで勢いだけだから」


「バッハッハッハ! その潔さが我にまさった要因かもしれぬな! 面白いぞサジン!!」


 何か気に入られたみたいだ。助かった。


「して、これからどうする? 聖楔の呪縛を解きにきたのには何か理由わけがあるのだろう」


「あぁ、そのことなんだけど俺の仲間のところに戻ってから相談してもいい?」


「よかろう。案内せよ」


 こうして俺はアスラと共にアムの待つダンジョン・コア広間に戻るのだった。

モチベーション維持のためブクマ、評価等々おなしゃす

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