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第15話 ※見せられないよ

「……こんな話を聞いても面白くないだろ」


「そんな事ないよ。サジンのことは何でも知りたいし、同期には必要な情報だからね」


「なら別にいいけどよ」


 この話にはまだ続きはあるが、それはまた後に語ることになる。


 アムは俺の話を聞き終えると、微笑みながら手を頬に伸ばしてきた。

 そして細くしなやかな指先が、頬から唇の輪郭をなぞるように滑っていく。

 俺はそれに抗おうとするも、虹色の光彩を放つアムの瞳に魅入られたかのようで動けずにいた。


 しかしそれとは別に、俺の内側からは自分でも思いがけない感情が溢れだしてきていた。


「サジン、泣いてるの?」


 ダンジョンに転生し、アムと出会うまでおよそ三週間。

 ステータス上スタミナが無限であり、疲れて眠るという生物的な機能も必要としなかった。

 しかしその弊害として、孤独を感じる時間だけが増えた。


 たったの三週間と思われるかもしれない。

 でも何の不自由もなく、現代文明に囲まれ生活しているときっと理解できないだろう。

 自分の他には誰もいない。しゃべる相手がいない。

 安易に退屈を紛らわすことができるスマホやパソコン、テレビ、音楽、雑誌。


 此処にはそれらは何一つ存在しない。

 石で出来た壁や床を視るだけの時間。

 臭いも味も感じられず、触れることも叶わない。

 昼夜すら分からない閉塞した薄暗い空間でずっと独りきりだった。





 そこにはあるのは絶対的な虚無。





 俺は500時間以上をその虚無の中で過ごしてきたんだ。



 考えないようにしていただけで、あと数日同じ境遇だったら気が狂っていたかもしれない。

 だから本当はアムと出会えたことを奇跡のように思っていた。


 それを彼女に触れられたことで思い出した。

 久しぶりに感じた体温の熱さ。他人と繋がっている感覚。


 あれほど両親を、他人を憎んでいた俺が爺ちゃんに救われた温もりを思い出させてくれた。

 その緩みが涙となって俺の目から零れ落ちていた。


 今は一人じゃない。


 それだけが堪らなく嬉しいことだった。


「うん、大丈夫だよ。サジンには私がいる」


「俺……俺は……ただ、寂しかったんだ。ずっとこのまま独りなんじゃないかって……だから」


 重ねられた唇と共に、俺は満ち足りていく想いをき抱いていた。

 俺はアムのことを何一つと言っていいほど知らない。

 だから恋愛感情なんてあるわけがない。


 それでも今は彼女の温もりと優しさが心の寄る辺だった。



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