第11話 スキルツリー解放
『サジン、何してんの?』
(見ればわかるだろ。石材でダンジョン広げようとしてんだよ)
俺はコツコツと増築スキルで石材を創り出し準備をしていた。
しかし、これしか方法が無いとはいえ効率がものすごく悪い。
変異種との戦いでレベルが一気に上がったが、困ったことに未だ掘削系のスキルを覚えないのだ。
(まったく、次のスキルって何レベルで習得できるんだよ……ちなみに現在18レベル)
『んー、ていうかレベル上げてもスキルって増えなくない?』
アムは小首を傾げながらそんな言葉を口にした。
(え……マジ?)
『マジ。レベルって基本の能力値が増えるだけで、新しい能力はスキルツリーで解放するものだし。でもサジンはダンジョンだからHPとかMPみたいな肉体的な能力値も変化しないけどね』
(――じゃあ何の為のレベルだよ……あ、一応スキルの限度回数は増えるから意味はあるのか)
レトロなRPG仕様ではなく近年流行のスタイルか。
どうりでこのレベルまで一つも覚えないわけだ。
だが待てよ。スキルツリーなんてステータスの中に無かったはずだけど。
(ん?)
アムが人差し指でチョイチョイと地面を指し示している。
俺は視界を床に向けると、そこには正しくスキルツリーらしき円形の図面が描かれていた。
変異種との戦いでは目の前のことに必死で全然気づかなかった。
石床には幾何学的な紋様と魔法陣がいくつも刻まれている。
(まったく読めん)
ツリーに点在する紋様はこの異世界の文字らしく、今の俺にはまったく読めない。
『じゃあ言語スキルから取っちゃおうか。どうせこの先も必要になるだろうし』
(どうすればいいんだ?)
『スキルを使う時と感覚は同じだよ。習得したいスキルを念じて自分の魂の在り方を変化させる』
急に難しいこと言うな。魂の在り方を変化させるって、俺は仙人でも陰陽師でもねえんだぞ。
(自信ないけど……試してみるか)
俺はアムが指を差した言語スキルの紋様に意識を集中させる。
すると、その念に呼応して紋様は淡い蒼光を放ちだした。
【言語スキルを習得】
視界内にスキルを習得したことを示す表示が浮かび上がった。
(簡単だったわ)
『でしょ?』
そしてさっきまで読めなかった異世界の紋様が読める。
いま習得した【言語】スキルからの派生は【耐性強化】と【属性付与】、そして【錬成】の3つ。
最初の2つは多分ビミョーだな。ダンジョンの俺には意味が無さそうだし後回しで良いか。
俺は引き続きダンジョン拡大に必要な掘削に使えそうなスキルを探す。
しかし――、
(ねえじゃん! ていうかスキルの説明が無いから具体的にどれが有用なのか分からん! そもそも今使えるのだってスキル名と中身がチグハグ感あるし色々と不親切過ぎるぞ! なめとんのか!)
『めっちゃキレててウケる☆』
(いや全然ウケねぇから)
『つまりサジンのイメージとスキルに乖離があるってことだよね?』
(そうだ。増築なのに何で石材を創り出すスキルなんだよ。あと改築もぶっちゃけ操作スキルだろこれ。グー〇ル翻訳とか使ってスキル名決めたのかよってぐらい不自然極まりないぞ)
『……ごにょごにょ』
俺が愚痴をこぼしまくっていると、アムは何か気恥ずかしそうに指を突き合わせていた。そして何やらボソボソと独り言を呟いている。
(どうした?)
『もしかして同期が上手くいってないのかもしれないね』
(それって俺とアムがってことか?)
『うん、私とサジンはHPだけじゃなくて存在自体が同じ領域にいるから、干渉し合ってる部分があると今みたいにサジンには理解しづらい影響が出ちゃうんだよ』
よく分からないが、おそらく電波が混線しているみたいな感じだろうか。
それなら運命共同体とか言ってたことも理解できる。
アムは異世界人だから、そもそも俺とは感覚自体が異なっている。そこに齟齬が生じて色々とバグってるって意味だろう。
(その調整はできたりしないのか?)
『できる。できるけど……ちょっと恥ずかしい///』
――何言ってんだコイツ。